街中歩いてたら逮捕されたんですが。【松田陣平】

逮捕１６〜萩原side〜 ページ16

「あ？近くに居たら寄っていけ？」


電話で高木と話していた陣平ちゃんが顔をしかめた。


しばらく話すと、陣平ちゃんはあろうことかこっちも見ずに走り出す。


「ちょっ！どこ行く気！？」


仕事中だっていうのに。


そんな俺の文句も、あいつには聞こえなかっただろう。

それくらい凄いスピードで走り去っていったから。




････高野ちゃん関連かな。



ふと、そんな考えが頭をよぎる。


あの陣平ちゃんが周りも見ずに行動するなんて、きっと彼女のことなんだろうな。


「･･･まさか、高野ちゃんに何かあった･･･？」


ヒヤリ、と背中が冷たく感じた。

まさか･･･まさか、そんな。


気付けば、俺は陣平ちゃんの後を必死に追いかけた。



.



















.



「あーら？今朝、萩原くんが彼女をベタ褒めしてたのを睨んでたのはどこの誰かしらね？」

「うっせぇつってんだろ！言うな！！」


ふと、居酒屋から楽しそうな声が聞こえた。

見ると、松田が佐藤さんの頭を軽く押えて何かを話していた。


傍では高野ちゃんがその様子を見ているようで。


「(良かった･･･)」


何もなかったらしく、ぴんぴんしていた。


だけど、どうしてか苦しそうな顔をしていた。

････陣平ちゃんと佐藤さんを見て？


ズキリと胸が痛んだ気がした。


なぁ陣平ちゃん。お前が好きなのは高野ちゃんなんだろ？

だったら何でそんな顔させるんだよ。


「･･･チッ。高野、聞きたいなら俺に言え。いつでも教えてやるから」

『本当ですか！？じゃあ教えてください！！』


俺だったら絶対にあんな顔させないのに。


「あー･･･その、好きな女ってのは･･･た、高ｎ「やっほ！高野ちゃん！！」･･･萩原ァ･･･」


陣平ちゃんが睨みながら胸ぐらを掴んでくる。

何も分かっていないフリをしながら、嫉妬を隠すように笑った。


････嫉妬。そうか、俺、嫉妬してるんだ。


陣平ちゃんに？

じゃあ俺、高野ちゃんのこと好きってことになっちゃうじゃん。


地味だって思ってた。何で陣平ちゃんはこの子のこと好きになったんだろうって。


･･･今なら、分かる気がする。


『松田さん、仕事をサボるのは･･･』

「後輩に呼ばれて断れるわけねぇだろ」

「いや断れるでしょ。萩原くん、ごめんなさいね」

「いやいや。俺も高野ちゃんに会えたから」



そう笑った俺を、目を見開いたあと察したように佐藤さんも苦笑いした。

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