自覚 ページ48
side未織
那「なんか暗くなってきたなー。」
「ほんとですね､そろそろ帰らないと。」
それからは､普段通りの雰囲気で色々な話をした。
凪「暗いし､未織一人で大丈夫？」
「大丈夫だよ」
柊｢俺が送っていくよ､遠くはないけど。
こんな時間だしね。｣
...え､それは止めておいた方が...､
那「そうしなよ､未織ちゃん。
心配だし。」
那智さんの有無を言わさない笑顔に､私は頷くしかなかった。
「柊平さん､すいません。
お邪魔した上に､帰り送ってもらっちゃって...。」
柊「ん？
いやいや､誘ったの俺らだし！
こんな暗い中一人で帰らせられないよ。」
...でも、こんなことしたらまた凪咲に。
柊｢...ふ、
未織ちゃんも感情が顔に出ることあるんだね。｣
「...､」
柊「今日のことだったら､気にしなくていいんだよ？あんなの慣れっこだし。
あ､でも未織ちゃんを巻き込んでごめんね...」
なんで､
柊平さんが謝るんですか...？
何故か泣きそうになる。
柊「なんか､未織ちゃんには
みっともない所ばっか見せちゃうね。
なんでだろ？」
みっともない所なんか、
一度だって見たことない。
柊「我ながら切ない恋してるなー！」
何も言えない私を気遣い､
軽口を叩くように言葉を続ける柊平さん。
「...切なすぎますよ、」
ようやく紡げた､
何の救いにもならない言葉。
柊「...､
多分､人好きになると切なくなるものなんだよ。」
それでも､私がようやく言葉を発したことに
心底安心したように笑う柊平さん。
「そう､みたいですね...」
柊「いつも心配してくれて､ありがとう」
「.....いえ。」
涙を零さなかったことを誰かに褒めてほしい。
胸が引き裂かれるように苦しい。
この気持ちを、
『切ない』って呼ぶんだとしたら...
私は...
柊平さんのことが好きだ。
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作者名：美波 | 作成日時：2020年5月4日 14時
