重力遣いの新相棒【文豪ストレイドッグス】

手紙 ページ37

〜中也side〜



「敦？」


俺は太宰に聞き返す。





「人虎のことでしょ？」



そこで、今まで黙って成り行きを見守っていたAが口を開いた。





「人虎？ああ、芥川たちの」


「そうそう。前芥川が人虎の捕縛に失敗したとき、太宰が人虎のことをそう呼んでたの、聞いたから」


「その通り。その敦君の為に70億の賞典を懸けた御大尽が誰なのか、知りたくてね」


「身を危険に晒してまで？泣かせる話じゃねえか……と言いたいが、その結果がこのザマじゃあな。麒麟も老いぬれば駑馬に劣るってか？『歴代最年少幹部』さんよ」


「……」


「ま、運にも見放されたしな。俺からしたら幸運だったぜ」


「……くくっ」


「何がおかしい」


「いいことを教えよう、明日……」





「『五大幹部会』がある、でしょ？」


「…っ！さすがA」


「ふふふ、だって手紙見たんだもん、それくらい分かって当然でしょ？」


「それもそうだね」





…なんか勝手に話が進んでいるが、俺の頭は停止している。



「五大幹部会？莫迦な、あれは数年に一度組織の重要事項を決定する時だけ開かれる会だ。あるならとっくに連絡が……」


「理由は私が先日組織上層部にある手紙を送ったからだ。で予言するんだけど……君は私を殺さないどころか、懸賞金の払い主に関する情報の在処を私に教えたうえでこの部屋を出て行く、それも内股歩きのお嬢様口調でね」



「はあ！？」




「あっはははは、それ最高！！ナイス、太宰！！」


「うるっせえ！！全然ナイスじゃねえよ！！！」


「私の予言は必ずあたる、知ってると思うけど」


「この……状況からか？巫山戯る……手紙？」



さっきからやけに手紙というワードを聞く気がする。




「手紙の内容はこうだ。『太宰死没せしむる時、汝らのあらゆる秘匿公にならん』」


「……？」




俺はその言葉の意味をゆっくり辿る。


太宰が死ぬ時、俺らのあらゆる秘密が……



って、嘘だろ！？！？




俺はあわてて太宰から距離をとる。




「真逆手前……」


「元幹部で裏切り者の私を捕縛した、だけど上層部に『太宰が死んだら組織の秘密がぜんぶバラされるよ』っていう手紙までついてきた。検事局に渡ればマフィア幹部全員、法で裁ける。幹部会を開くには十分すぎる脅しだ」




まじかよ……


というか、ちょっと待て。


さっきAが言っていた手紙って……このことなのか？


ならなんでAは手紙のことを知ってたンだ……？

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