弐拾壱 ページ23
.
中原「妃薫!!?」
突如、妃薫の体が切り裂かれた。
鮮血が散り、雨に混じって地面を染めた。
「ほォら、未だショーは始まったばかりだぜ!?」
其れは鎌鼬だった。高速で風が吹く事により皮膚が切れる自然現象。
だが風の他に四つの自然を操る事の出来る男にとって、此の程度はほんの前座に過ぎない。
中原「ぅおっ!?」
中原が後方に吹き飛ばされ海に落下した。重力を遣い出ようとするも海水は男により操られ、中原の体は沈んで行く。
『っ中也!!』
妃薫は鎌鼬を喰らい乍らも海へ飛び込んだ。
既に溺れ掛けて居る中原の腕を引き水面から顔を出した。が、直ぐに波が襲い掛かって来る。思い切り息を吸い二人は自ら海へ潜った。
水圧は風圧と比べても遥かに其の威力を越える。泳いでも意味が無いと察した二人は、水面に向け思い切り攻撃を放った。
水飛沫と共に二人が海から飛び出る。
体力を消耗した二人に、今度は炎が襲い掛かった。
妃薫にとって外傷は敵では無い。鎌鼬の傷は既に治癒され体力も戻りつつある。だが中原はそうは行かない。迫り来る炎への反応が遅れた。
「そうだよなァァ──お前は、そう云う奴だよなァ、スカーレットォォ!!!」
嬉々として男は叫んだ。
中原「手前、何で...っ!!」
『ぅぐ...っ』
炎が妃薫を包んだ。
再び海に飛び込み火を消そうともがく。然し其れは先刻の繰り返しで、又波が妃薫を襲った。
中原「良い加減にしろよ手前ェ!!」
「何でアンタは彼奴の仲間で居るんだァ?」
男はニタリと笑い、拳を容易に手で受け止めた。
「彼奴は殺人鬼だ。人を殺し、証拠を消し、罪を消し、云うなれば全てを誤魔化し続け乍ら生きて来た、糞みてェな化物だ。...あの“三日間”の話を聴けば誰だって解るだろ」
中原「三日間...?」
「...嗚呼、若しかして──聴いて無いのかァ」
『中也、離れて!!!』
妃薫が腕を大剣に変化させ飛び掛かった。
中原はすかさず後方に飛び退き、そして──妃薫を見る。
『...中也?』
中原は云った。
中原「“空白の三日”ってのは何なんだ?」
途端、妃薫の顔から表情が失われて行った。
「あっははは!此れは傑作だァ──彼の大虐殺の事を、話して居なかったとはなァ!!」
ひゅ、と息を呑んだ音がした。
62人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:妃薫。 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakaharaty1/
作成日時:2018年3月12日 1時