壱拾伍 ページ17
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「よっ、妃薫。久し振りだな」
男は云った。
妃薫は数秒硬直し、そして息を呑み、名を呼んだ。
『クレセント』
C「嗚呼良かった、忘れられたかと思ったぜ」
『何故、貴方が、此処に』
C「おいおい、んな顔すんなって。俺様は只、今じゃもう伝説にまで為っちまった弟子の面拝みに来ただけだ」
クレセントはそう云って妃薫の肩を抱き、笑顔を見せた。
妃薫も釣られて笑みを溢し、自分より一回り程大きな体に、腕を回した。
場所は海辺の崖。部下や中原達も居ない。居るのは“鬼”が、二人だけ。
『元気そうで何よりだわ。又餓死してるんじゃないかって心配していたのよ』
C「いいや、お前のお陰で元気なの何の。此迄にねぇ位絶好調よ!」
『ふふ、其れは良かった』
体を話し、視線を交え、再び笑う。
C「其れで?如何だよ、此処の生活は」
『楽しいわ。充実してる』
C「ほぉ。お前が其処迄云うなら大丈夫そうだな。此れで俺も安心して旅の続きが出来る」
『まだ続けてるのね、流離いの旅。流浪の方が似合うかしら』
C「吸血鬼なんざ、そんなモンだろ?」
『ええ、そうね。確かにそうだわ』
C「其れよりお前の仲間を紹介して呉れよ。気になって仕様がねぇ」
『良いわよ、来て』
妃薫は恍惚とした表情で、クレセントをポートマフィアのビル──最上階へと導いた。
鴎外は二人の突然の来訪に驚きつつも、クレセントに興味を示した。
鴎外「其れでは君が、妃薫君を吸血鬼にした主人なのかね」
C「まァそんな感じだな。妃薫が案外幸せそうで、俺様も安心したぜ」
鴎外「ふむ...金髪金眼に尖った歯。正に西洋の鬼、ヴァンパイアと云った風貌だねぇ」
『私も本来はこうですよ。能力で外見を変化させてるだけですから』
鴎外「...妃薫君、其の外見変化を一寸解いて」
『厭です』
C「かかっ」
何処となく似た雰囲気を纏う二人を見て、鴎外は微笑んだ。
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作者名:妃薫。 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakaharaty1/
作成日時:2018年3月12日 1時