検索窓
今日:4 hit、昨日:4 hit、合計:20,998 hit

求めるもの ページ11

「許さねぇっ!」


若武が僕に飛びかかってくる。

けれど、見事、僕に避けられて、床に倒れ込んだ。



その姿があまりにも痛々しくて、思わず口が漏れた。

「……ださい。」



そう言った瞬間、若武以外の全員が吹き出す。


「やるな、立花。」

「まさか、そんなこと言うタイプとは思わなかったよ。」

「若武先生の顔に泥だ。」




そんなに笑うとは思わなかった。

だって、みんな思っただろう?




若武はムクッと起き上がり、怒鳴った。

「刑法240条名誉毀損罪でお前を訴えるぞ!」



僕はケラケラ笑う。

「法律詳しいんだね、若武。
 でも、だったら分かるでしょ?

 証拠がないと犯罪にならないって。」



それでも若武は引き下がらない。



若武はグッと苦しそうに、上杉達を見渡した。

「ここに証人が3人も居る!」




……若武って面白い。

からかい甲斐のある奴だ。



僕は上杉たちと向き合う。

「じゃあ、上杉たち、今見たこと忘れてくれない?
 そしたら、国語の点数が上がる方法教えるけど。」



上杉たちはニヤッと笑い、わざとらしく言った。


「忘れろってなんのことだ?」

「僕ら、若武が転けたところしか見てないよね。」

「あぁ、それ以外に何も見てないし、聞いてない。」



おっし、これで証拠隠滅。



若武は縋るように上杉の瞳を見つめる。

「俺のこと見捨てんのか?
 嘘だろ?なあ?」



見るに耐えない……。


僕は若武に目線を合わせるために少ししゃがんだ。



「さて、証拠は無くなったよ。
 負けを認めな?」

「うっせぇ!
 覚えとけよ、立花!!」



そう言って、若武は特別教室を出て行った。



いやぁ……面白かったなぁ。

僕ったら、人のことを揶揄(からか)ってしまった。


そんなこと、母は望んでいないだろうに。



でも、楽しいって思えたんだ。

久しぶりに本当の自分を出せて、清々しい心が生まれた気がする。




若武が出て行った扉をジッと見つめていると、ゆっくり扉が開き、若武が帰ってきた。


「……秀明バッグ取りに戻っただけだからな。」




僕はまた吹き出して笑った。




本当に、本当に、面白い。

ここには、僕の求めるものがあるかもしれない。



不意にそう思った。

母の無関心→←あいつら



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (92 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
49人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

さまー(プロフ) - 頑張ってー!!!! (8月3日 7時) (レス) id: ad3984bf8f (このIDを非表示/違反報告)
あき@草売り大魔王(プロフ) - コメントありがとうございます!!ええっ、そんな言葉もらっていいですか!( ; ; )嬉しいですううう!!これからも更新頑張らせていただきます!! (8月2日 23時) (レス) id: 6c759d28ae (このIDを非表示/違反報告)
さまー(プロフ) - 初めて見ました!めっちゃ面白い!これからも更新がんばってください! (8月2日 14時) (レス) @page20 id: ad3984bf8f (このIDを非表示/違反報告)
かっち(プロフ) - あき@草売り大魔王さん» テスト頑張ってください!更新も無理しないでくださいね! (2022年7月5日 0時) (レス) id: 1b6cbbdaba (このIDを非表示/違反報告)
あき@草売り大魔王(プロフ) - かっちさん» コメントありがとうございますううう!!最近更新できなくて申し訳ないです( ・∇・)今週でテスト終わるのでその隙に更新しまっす!! (2022年7月4日 16時) (レス) id: e269879e16 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あき@草売り大魔王 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp  
作成日時:2020年8月29日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。