不思議な気持ち ページ34
翔は強張った顔を治さず、言った。
「彩には帰る場所がある。
一緒に帰ろうぜ。」
差し伸ばされた大きな手。
私に、この手を掴む資格はあるのだろうか。
この手を掴んで良いのだろうか。
天使に言われた、”逃げないで“という言葉。
私は今まで逃げてのかもしれない。
立ち向かうべき真実に。
きっと、今の私に、翔の手を取る資格はない。
けれど、掴みたいと思う。
私は静かに手を置いた。
すると、翔はニコッと笑って、手を引いてくれたんだ。
「みんなが待ってる。
俺も、フレンドも、そしてKZも。
行こう、彩の居場所へ。」
翔は軽く走り、私の手を引く。
私はただその手を離さないように走った。
離したくないから、もう2度と。
連れて行かれた場所は、秀明の特別教室。
そして、そこには、フレンドとKZが居たんだ。
辺りは、要をなして散りゆく桜のように寂しい空気。
ふと、裏切られた時のことを思い出してしまったんだ。
グッと苦しくなる胸を抑えて、私は声を出した。
「……ねえ、みんなは、自分の歩んできた道が間違っていたら、どうする?」
みんなは、突然の言葉に驚いた顔をする。
少し突然すぎたかな。
「私、KZに別れを切り出され、フレンドを作ったんだ。
その時は満足だったの、それだけで。
でも、今考えると、馬鹿みたい。
私は間違えたんだよ、道を。」
誰も何も言わなかった。
けれど、少しすると、忍が優しく問う。
「なら、どこで彩は道を間違えたと思う?
どこからが間違いだった?」
どこから、かぁ。
正直それは分かっていない。
ただ間違えたのは確かだと思うんだ。
感情の何かが溢れそうになる中、私は取り繕った笑顔を見せる。
「もしかしたら、KZに出会ったところから、間違いだったのかもしれない。」
すると、次の瞬間、誰かがバン!と大きな音を鳴らして、机を叩く音が聞こえた。
音の方向へ向くと、そこには怒った若武の姿。
私、何か変なことでも言った!?
あたふたしていると、若武は大きな声で叫んだ。
「KZとアーヤが出会ったのは間違いじゃない!
ましてや、俺とアーヤが出会ったことも間違いじゃねぇ!
誰がなんと言おうともな!」
若武の迫力に思わず一歩引き下がる。
昔みたいに横暴。
けれど、自然と悪い気持ちはしなかったんだ。
むしろ……嬉しかったかもしれない。
147人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「探偵チームKZ事件ノート」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あき@草売り大魔王(プロフ) - むっちゃんさん» コメントありがとうございます!!そんなこと言ってもらえるなんて……一生家宝にしちゃいますよ!(?)更新はのんびりですが頑張ります! (2021年11月26日 16時) (レス) id: 8824d19027 (このIDを非表示/違反報告)
むっちゃん - 涙が止まりませんでした。これからも頑張ってください!! (2021年11月26日 2時) (レス) @page50 id: feee1d7f79 (このIDを非表示/違反報告)
あき@草売り大魔王(プロフ) - 菖蒲さん» コメントありがとうございます!!応援に応えられるように頑張っちゃいますよ!! (2021年9月9日 16時) (レス) id: 8824d19027 (このIDを非表示/違反報告)
菖蒲 - おもしろー!これからも、頑張れ(・v・)応援してますね! (2021年9月9日 10時) (レス) id: e522f808ef (このIDを非表示/違反報告)
あき@草売り大魔王(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます!!感動だなんて……ありがとうございます!!とてもモチベーションが上がり、もっと書けそうです(?)更新頑張りまっす!! (2021年6月20日 19時) (レス) id: 8824d19027 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あき@草売り大魔王 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp
作成日時:2019年12月26日 19時