絡まる絆は知っている

天使の言葉 ページ11

「そもそも、ここは死後の世界。


　行き場をなくした魂が過ごす場所なの。


　人間で言う天国。



　ここでは、人間世界と違って、犯罪も喧嘩も無い。
　平和っていうのかしら？」


天使は甘く笑った。





その時、一瞬でも、羨ましいと思ったんだ。





だって、喧嘩がないんでしょ？


そうしたら、私だって、KZのみんなと今でも笑えてたかもしれないのに。






あんなところじゃなくて、ここでKZやフレンドのみんなに巡り会いたかった。


そんなことを考えてると、天使が私を睨んだ。




「まさか、あなた、ここに生まれたかったとか考えてないでしょうね？」

釘を刺すように言われ、私は素直にYESと答えられなかった。





何も言わない私を見て、天使が険しい顔をする。


「ここに居ても、幸せにならないわよ。
　いいえ、幸せになれない。」



天使の言葉が胸に刺さる。




平和なのに、幸せになれない？

意味が分からない。



どういうことか聞こうとすると、その前に天使の声が先に出た。






「さっき言った通り、ここは死んだ者の世界。


　死んだ者には、感情がないの。

　考えることも、ほとんどない。


　でも、あなたは考え、感情を持ち話している。
　どういうことなの？」




死後の世界では、感情がない？

考えることもない？






私は、天使の質問に答えられなかった。


自分でも、この状況が分からないもの。





だけど、こっちだけ情報を渡さないのは、嘘つきということになる。





だから、私は、自分の分かってることを、出来る限り説明した。

裏切られたこと、居場所がないこと、身を投げたこと。








全てを説明すると、天使は肩を落とした。


「あなた、まだ生きなければならない訳があるのね。」

生きなければならない訳……？







そんなもの、私には無い。

生きる意味も、価値も無いもの。





私は首を振った。

「私に生きないといけない理由なんて無い。」




自分で言いながら、心が締め付けられる。





すると、天使が言った。

「たとえ、あなたがそう言っても、こっちはこっちの仕事があるの。

　あなたの願いをなんでも、ひとつ叶えてあげるから、人間世界に帰ってちょうだい。」

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