雑草弍拾弍本 ページ23
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シンと静まり返った部屋に、壁掛け時計の規則的な秒針の進む音が大きく響く。
抱き締められた儘、返事も何も無い。
唯一解るのは、お互いの心拍数が一気に加速した事のみ。こんな風で太宰さんはドキドキするのか、と彼の人間味に触れられた気がして、それだけで幸せだと感じる。
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このまま振られても、私は後悔しないだろう。
云わず後悔するより云って後悔する方が幾分かはましだと思える。何より私らしい。
一分一秒がずっと長く、まるでこの空間だけが他空間と切り離されたかのようにも思ったその時。
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太「っふふ、ふふふ」
突如あの独特な色気を纏った声で笑った。
女性の色気にも似たそれは、鼻から抜ける様に柔らかく過ぎる。
太「否、何ね、私でも之は予想出来なかったのだよ」
未だに肩を震わせ笑う太宰さんは、そっと私の肩を持って顔が見える距離まで離した。
『予想、ですか?』
太「...Aちゃんは私を、一上司としてしか見ていないのだろうと思っていたんだ。真逆Aちゃんに告白されて仕舞うとは!」
私は嘗てない程に幸せ者なのだね!と朗らかに笑って、そして私の目をじっと見つめた。
太「良いのかい?私で。後に後悔しても君を離す事は約束出来ないよ?」
『後悔なんてもう充分です。きっと云わない方が後悔するので。それに』
"太宰さんを確り支えるのは、他の方では少々心労が過ぎそうです"
そう云って悪戯に笑って、彼の背に手を伸ばすと思い切り抱き締めた。太宰さんの他の人には無い香りが好きで、首元に顔を埋める。
太「そうだねえ...君の事を一番想っているのも私だからね!」
覚えてい給え、と優しげな声で耳元に語りかけて、またそっと笑みを零した。
未だ見た事の無い貴方の顔に、私はきっとまた出会うのだろう。
これから。
その日々を考えて幸せだと思う私は、人並みの幸せを得ていた。
人と同じく、誰かを愛する事を知った。
私は、高嶺の花で無くて良かった。
雑草の様に小さく、凛と咲いていて良かった。
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初めて想った人に見初めて貰えたのは、私が雑草だったから。
(強く折れない、雑草だったから)
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澪夜&淡海(プロフ) - ゆーさん» コメント有難う御座います!!太宰さんへの愛の大きさがわかります!!笑これからも沢山更新します!!!! (2018年3月24日 7時) (レス) id: 16e9b87fa3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆー - ありがとうございますありがとうございますありがとうございます、。もうありがとうございますしか出てきません。。。はぁ、、太宰さん尊い、、更新楽しみにしてます!!!!!!! (2018年3月23日 22時) (レス) id: b0013dea70 (このIDを非表示/違反報告)
澪夜&淡海(プロフ) - マカロン♪@塩きゃらめるさん» 有難う御座います!そう言って頂けると試行錯誤した甲斐ががあります!! (2018年3月13日 23時) (レス) id: 16e9b87fa3 (このIDを非表示/違反報告)
マカロン♪@塩きゃらめる(プロフ) - 表現がとても素敵で読んでいてドキドキしました!更新頑張ってください! (2018年3月13日 10時) (レス) id: 32efa4f0b1 (このIDを非表示/違反報告)
澪夜&淡海(プロフ) - 竹薮さん» コメント有難う御座います!そうですね、そこら辺の事には疎い子であって欲しいです!笑 (2018年3月11日 14時) (レス) id: 16e9b87fa3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:淡海 | 作成日時:2017年3月11日 16時