堕天

7.完全無欠の天使様 ページ7

真っ暗闇の中でカシャッ、とカメラのシャッター音が鳴った。


その瞬間、手にカメラを持った大勢の天使が目の前に現れる。


何で追われているのか。何でいきなり現れたのか。何も分からず、理解も追いつかないままひたすらに走る。


振り返る暇もなかった。大勢の足音が近づいてくるのが怖くて仕方がなかった。


「…Aさん」

暗闇の中から浮かび上がるようにして、突然目の前に現れたB様。



「起きてください!」


「えっ?」


眠りの底から叩き出される。


辺りを見回すと、そこは図書室で＿


カメラを持った天使なんて一人もおらず、心配そうな顔をしたB様が私の顔を覗き込んでいた。


「すみません。あまりに苦しそうでしたので、起こしてしまいました。大丈夫でしたか?」


「あ…ありがとうございます」


夢だったことに凄くホッとした。それと同時に、寝顔を見られてしまったことの恥ずかしさが襲ってくる。



「それにしても、まさかこんな所にいるなんて思いもしませんでした!」


「えっ?18時に図書室集合、って伝えられたのですが…。」



B様は何かを考えるように顎に手をあて、「私は17時に第三資料室に集合、と伝えたはずですが…」とつぶやいた。


そういえば、思い当たる節があった。


疑うような事は考えたくないが、上司が嘘をついているのではないか、と。


最近、上司が私に対して冷たい態度を取るようになった。


例えば、最初の頃は私に対してタメ口で話していたのに、今は敬語だ。


その理由は、考えずとも何となく分かる。


隣にいるB様を、横目でちらっと見る。


物思いにふけるB様の顔は、とても美しかった。


そうだよね。こんなに素敵な天使様、好きにならないわけないもんね。



「まあ、いいでしょう。ところで、少し奥の方に移動しませんか?誰にも聞かれたく無いような話なので」

「分かりました」


狭い通路の中を進んでいく。突き当りでB様は立ち止まると、私と向き合った。


「すみません。小声で話したいので、近づいてもいいですか？」


「もちろん、大丈夫ですよ。」


距離がどんどん縮まっていく。B様が近づくのに比例して、私の心拍数も上がっていく。


どこまで近づくの、と思った矢先で、B様が止まった。


靴先がつき、身体が触れてしまいそうな距離。キスでもするようなこの距離感に、心臓が破裂しそうな程ドキドキした。


助けを求めるような気持ちでB様を見上げる。いつもと変わらない、余裕そうな表情で見下された。

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