堕天

13.死闘 ページ39

彼女が大きく跳躍し、一気に射程範囲内まで距離を詰めた。

背筋にひやりとしたものを感じ、剣を構える。

キィン_と、重い金属音が響いた。

予想以上の重い一撃に、私の身体は踏ん張りきれず、後ろに下がった。

弱ったところにつけ込まれ、激しい雨のように次々と攻撃が浴びせられる。

反撃の隙など無く、防戦一方だ。


このままだと、一方的に体力を消耗するだけになる‥！


逃げるように大きく後ろに下がり、肩で大きく息をついた。

「どうしたの〜?ねぇ、逃げるのはやめる、ってさっき言ってたわよね?」

胸が引き裂かれるような、激しい痛みに襲われる。


＿彼女がB様と離れろといったとき、私はそれを呑んだ。

結果的に成功はしなかったものの、それはほとんど奇跡に近い。


_また、自分の弱さから逃げるの?


「‥そんなこと、するわけないじゃないですか！！馬鹿にするのもいい加減にしてください！！！」

無我夢中で飛びかかる。

それはほとんど自暴自棄で。

頭の中がぐちゃぐちゃだった。

「‥かかった。」

彼女が二やっと笑うのと、シャノワールが悲痛な悲鳴をあげたのはほぼ同時だった。

何が起きたのか分からない。
地面がぐらつき、私はその場に片膝をついた。
肩から激しい痛みと熱を感じる。

恐る恐る触れると、ぬらぬらとした感触とともに、手に真っ赤な液体がべったりとついていた。

血の気が引く。
頭の中が急激に冷めていく。

「運がいいわねぇ〜。本当は顔を狙ったのに。しかも、かすり傷程度じゃない。」

「ニャア‥」

不安げに鳴いたシャノワールの声を聞いて、炎を胸の中に宿らせる。

こんなんでくじけてちゃだめだ‥！それに、B様と生きて逢おう、って約束したじゃない！

「‥大丈夫です。このくらい‥！まだ‥戦えます‥！」

「しぶといわね。しつこいところも大ッ嫌い！！」


激しい斬り合いが再開される。

ただ、なんとなく攻撃が軽くなったように感じた。

それに、荒い息遣い。滴る汗。

どうやら、相手も疲れてきているようだ。

希望の光が見えてくる。

だが、ここで長丁場に持ち込まれるのはまずい。

私は一刻も早く、B様のもとに向かう必要があるのだから。


「はぁ‥はぁ‥あんた、ほんっとうにしつこい！」

「そちらこそです！はやく‥負けてください！」

一段と重い金属音が響く。

彼女が後ろに大きく下がった。
それにならい、私も距離を取る。

お互い息をつき、強く睨み合う。


「ねぇ‥一つ‥質問が‥あるのだけど‥」

→→←12.再開

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す