弱った左馬刻様の安定剤 (ページ38)

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過去(霧島side) ページ38

霧島side

俺がこの組に入ったのは18の時だ。

その時はまだ、歳の近い奴が少なく、

大半が20歳を超えた大人達ばかりだった。

頭が、子供を組に入れることを

あまり良しとしていなかったからだ。

だから、当時は誰と話すにも

気を使っていた。

そんな時、お嬢は俺に話しかけてきた。

お嬢の事は、頭から聞いていたが、

直接会って話すのは初めてだった。

きっかけは些細な事だ。

勉強の事だったか、

友達との事だったか……。

それから、

お嬢にとって、一番歳の近い俺は

よく遊び相手や、話し相手になっていた。

親しくなって1年が過ぎた頃、

お嬢の母親、つまり頭の妻である

あの方が、屋敷からいなくなった。

組員総出で探したが見つからなかった。

いなくなる直前、

お嬢に、沢山謝っていたと言う。

それを聞いて、自ら逃げ出したのだと、

さらわれた訳では無い、と結論づけた。

それからは、下っ端だった俺が

お嬢の面倒を見て、

母親の代わりに飯を作ったり、

身の回りのことをしてやった。

そして、月日が流れ、

お嬢が高校生の時だったか

左馬刻がうちの組に入ってきた。

奴も当時は中学か高校生くらいだったはずだ。

左馬刻の態度には、

俺も頭も手を焼いていた。

いつもちょっとした事で喧嘩をして

帰ってくることが多い。

強いだけあるが、ガキの割に

大人びた思考と、言動をするあいつは

心と体のバランスが

取れてないように見えた。

そんな時、お嬢はいつもの様に

左馬刻に話しかけていった。

初めは突き返されていたが、

気づけば二人は親しくなっていた。

そして、あの事件の後、

お嬢の世話役兼護衛役になり、

お嬢の学校の送り迎えや、家の事は

俺が全部していたし、

万が一、寝込みを襲われる可能性もある、と

同じ部屋で寝ていた時期もあった。

お嬢と左馬刻が必要以上に

会わなくなったあとも、

お互いを想っていることは知っていたが、

お嬢も年頃だった事もあり、

溜まるものは溜まるらしい。

二人がお互いに欲の発散として、

別の奴と寝ていることを聞いてはいたが、

お嬢に誘われた時は正直気が引けた。

俺はそういう目で見たことはなかった。

しかし、気持ちがなくとも、

できないことも無いのが憎い。

あくまで、道具として

自分を使ってくれと約束し、

何度か相手をした。