過去(左馬刻side) ページ40
左馬刻side
俺は、両親のことがあってからは、
誰にも頼らず生きていくと決めていた。
唯一の家族で、妹の合歓(ねむ)を
守ってやれるのは俺だけだ。
ここの親父に拾われて
世話になるようになってからも、
ここの奴らには頼らず、
自分の力で生きて行くつもりでいた。
街中で喧嘩をふっかけられて相手をして帰る度に
親父や霧島のおっさんにはどやされていたが、
組には迷惑をかけていない、
あくまで俺個人にふっかけてきた喧嘩だと
言い返していた。
ある日、親父にまたどやされて部屋から出ると、
そこには姐さんがいた。
昔からここにいる奴らはお嬢と呼んでいたが、
下っ端の奴らや、姐さんより歳下の奴らは
皆、姐さんと呼ぶから、俺もそう呼んでいた。
A『左馬刻、少しいいかな？』
初めて声をかけられた。
左馬刻「……………なんだよ。」
姐さんは無言で先を行く。
親父の娘ということもあり、
あまり不躾な態度も取れないと思い、
仕方なく着いていく。
A『…………入って。』
左馬刻「………………姐さんの部屋か？」
A『……………………。』
俺の質問には答えず、
部屋に入るのをただ待っている。
部屋に入り、適当に座ると、
A『…………頑張ったね。』
左馬刻「…………………………は？」
姐さんは、それだけ言って、
腕の傷の手当を始める。
左馬刻「ﾁｯ……必要ねぇ。
用がねぇなら帰る。」
A『すぐ終わるから、待って。
………………左馬刻は、強いんだね。
いつも頑張ってて、偉いね。
………………お疲れ様。
でも、ここでなら
少しは肩の力抜いても大丈夫だよ。』
姐さんにとっては、俺は歳下のガキだろう。
だが、ガキ扱いされるのは胸クソ悪い。
なのに、気を抜くと
思考を溶かされそうになるほど
姐さんの言葉は、心地よかった。
その感覚が今の俺には、怖かった。
だから、姐さんとの関わりを俺は拒んだ。
左馬刻「っ……いらねぇ。
俺が強いのは当たり前だ。
ガキ扱いすんじゃねぇ。」
それだけ言って、部屋を出た。
それからも、何度か声をかけられたが
俺はシカトしたり、
何かと理由をつけて逃げ続けた。
2、3ヶ月そんなやり取りが続いた。
その間に分かったことは
姐さんは誰にでも声をかけ、
誰にでも平等に優しいという事だった。
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作者名：ゆず | 作成日時：2019年7月17日 2時
