つまらない女。【日々樹渉】

三年間 ページ15

はじめは、いつでしたっけね。
きっと貴方に聞けば、私が貴方に｢つまらない｣と言ったのが、初めて会った日だと言うでしょう。
覚えてなくても当然です。覚えてる私の方がよっぽど重症なのだから。


｢貴方の髪、とっても素敵！｣


小さな、それこそ遊具が3つしかない。そんな小さな公園のブランコで動かずに座っている私に、貴方は話しかけたんですよ。覚えていませんか？

三つか、四つの時です。
私のお母様もお父様も、どちらも引き取って下さったにも関わらずお優しい方々でしたから、幼少期はとても幸せでした。

でも、どこか息苦しくて。
貴方も同じだったんでしょう。だからあんな高級住宅街に釣り合わない公園で、毒抜きをしていたんですよね。

小さな頃からマジックは好きだったので、君に度々見せていたのも、覚えていませんか。見せる度に君はあんなにも目を輝かせていたのに。

一緒に折り紙だって折ったじゃないですか。
今度たいむかぷせるっていうやつやってみたい！と言い出したのも貴方だし、オセロで負けて泣いたのも貴方なのに。


ずっと同じだった。同じ人間だったのに。
ずっと隣に居たはずなのに。


八年後、そんな美しかった思い出も全部忘れて、私に対して憧れと期待の眼差ししか持たない君と舞台で会ったのは。


私にはもう、素敵な髪だねと、褒めてくれないんですか。


格が違う。天性の才能。素晴らしい演技力。それ以外の言葉で、私を飾ってくれたのは君なのに。
君も、同じ言葉しか言わなくなってしまったんですね。


確かに君は、演技がとても上手でした。褒められて、嬉しかったんでしょう。でも、周りが段々私だけを褒めていったのも事実です。
演劇、楽しめなくなったんでしょう？


あの時ばかりは、褒められたいだけだったのかと絶望してしまって。だから私は君に｢つまらない｣って言ったんです。君なら、そんなの気にしないって思っていたから。
でも、貴方は気づいたら居なくなってましたね。それからはずっと、私に敵対心ばっかりで！

私の世界で、貴方は特別だった。

気を紛らわせたくて、何となく受けたアイドル科の試験。1位で受かってしまって笑ってしまって。


でも、それが良かったのかもしれません。

こんな私にも、お友達が4人ほど出来たんですよ。可愛らしくて、素直じゃない後輩が2人も出来た。

嬉しかったんです。


あんなに特別だと思っていた、貴方を3年も忘れるほどに。

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