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どうやら所長は｢新しい記録員がいる｣と事前に木林さんに話していたらしい。その名前が以前会った医者と同姓同名だったため、私がここで働いていることに気づいたようだった。
｢それにしても１回会っただけなのにすごい記憶力ですね｣と感心すると、木林さんは
｢あの事件は良くも悪くも印象的なものでしたから｣と苦笑した。
それは当然のことだろう。私だってあの時のことは忘れられない。
｢さて、そろそろ本題に入りましょうか。こちらが運搬するご遺体で間違いないですね？｣
｢えぇ｣
｢さーてAさん。初仕事ですよ｣
｢はい、足を引っ張らないように頑張ります！｣
初仕事だからって迷惑をかける訳にはいかない、と意気込みを述べる。
｢…そのことなんですが、｣
一方、木林さんは表情を曇らせすると少し言いづらそうに話を切り出した。
｢Aさんは今回の解剖から外れた方がよろしいかと思いまして｣
｢…えっ？｣
所長と顔を見合わせる。
｢ここだけの話、今回のご遺体はかなり熟しておられます。慣れていない人間だと恐らく仕事にならないくらいきつい｣
｢…もしかして、私を呼び出したのもこの件を伝えるためだったんですか？｣
｢えぇ。まだ中堂先生に言いづらいかと思いましてね。私からAさんを解剖から外すようお願いしようかと思ったんです。｣
そんな権限が木林さんにあるの？あくまで葬儀屋なのに？
｢おや、ご存知ない？私と中堂先生は仲良しなんですよ｣
私の疑問を察したのか冗談交じりに答える木林さん。
あの中堂さんと仲良しだとは。その言葉の真意は分からないが、いずれにしてもそれは私には必要ない申し出だ。
｢わざわざありがとうございます。でも私は大丈夫です。死体には慣れているので｣
｢…ほぅ、死体に｣
しまった、と思った時には木林さんは訝しげな目で私を見つめていた。つい彼の提案を断るために言ってしまったけれど、常識的に考えれば死体に慣れた人間なんてそういない。
｢…その…医者だったので…｣
｢腐敗した遺体に慣れた医者とは、まるで闇医者ですね。Aさんは外科医で、生きた人間を診てきたのでは？｣
適当な言い訳をするも余計に墓穴を掘ることになってしまう。
｢木林さんやめてください。彼女は善良な人間です｣
｢失礼しました。ちょっとした冗談ですよ｣
木林さんは頭を下げて謝ると、これまた胡散臭い笑みを浮かべるのだった。
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みーこ(プロフ) - アンナチュラル再熱して、読みにきました。木林さんとのやりとりに感銘を受けました、もし続きがあるのならば更新をお待ちしております、、！ (2022年6月1日 19時) (
レス) @page24 id: 71713ba9a2 (このIDを非表示/違反報告)
EL(プロフ) - なんだか急かしてしまってごめんなさい。素敵なお話なのでつい。のんびりお待ちしております。 (2020年10月26日 23時) (レス) id: 7933e3d246 (このIDを非表示/違反報告)
雪鳩(プロフ) - ELさん» コメントありがとうございます！私生活が忙しく執筆が遅れていますが、ゆっくり更新していくつもりなので気長にお待ちいただけると嬉しいです！ (2020年10月25日 2時) (レス) id: 76789842a1 (このIDを非表示/違反報告)
EL(プロフ) - 更新楽しみにしております。 (2020年10月18日 21時) (レス) id: 7933e3d246 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雪鳩 | 作成日時：2020年8月24日 0時
