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資料に一通り目を通したミコトが｢そういえば、｣と思い出したように話し出す。
｢自 殺といえば、今回のご遺体は正式な依頼で間違いないですか？前みたいに葬儀場から強奪してきた、なんてことはないですよね？｣
｢もちろん確認は取れてます。その捜査資料は本物ですし、明日も警察の方に来てもらいますからその辺は心配ありません｣
｢強奪、ですか？｣
ご遺体を強奪とはなかなか聞かない不穏な言葉である。
｢そうそう、昔ご遺体を強奪からの死体損壊罪！なんてことがあったのよね。その人も恋人が自 殺したなんて思えない、ってことから始まって…。ほら、これ見て｣
東海林さんは机の引き出しを漁ると『報告書』と書かれたファイルを取り出した。ページを捲り、解剖の経緯や所見が書かれた資料を見せてくれた。
｢鈴木…巧？…これ、確か殺人犯のまゆさんが刺された事件でしたっけ…｣
心臓が締め付けられるような感覚。依頼者の名前、鈴木巧。そして刺されたまゆ。忘れるはずがないその名前。
｢え、なんで知ってるんですか？｣
｢ミーコートー？まさか部外者だったAちゃんに話したのー？｣
｢私！？いやいやそんなまさか、違うって。いくらAが友達だからって個人情報を喋ったりはしないよ｣
久部さんと東海林さんに詰め寄られて狼狽するミコトに、私は慌てて訂正する。
｢私が外科医だった時にまゆさんの治療を担当したんです。復讐殺人のことは病院側からの情報で知りました。結構院内でも話題になったんですよ｣
｢ほー、すごい偶然ねぇ｣と東海林さん達が納得したように頷いた。
｢では中堂さんはAさんに感謝しないといけませんね｣
｢神倉さん！その話は…｣
んん？中堂さん？
｢あの、どうして中堂さんなんですか？｣
何故か言い合いになる中堂さんと神倉さんを尻目に、ミコトに尋ねる。
｢詳しくは話せないんだけど、中堂さんその事件絡みで色々あってね。でも、Aがまゆさんを助けてくれたんだね。本当にありがとう｣
｢……｣
｢…Aさん？｣
｢あっ、ごめんねA！何の話なのかよくわからないよね｣
｢ううん、大丈夫｣
ミコトから告げられた感謝の言葉が、心に突き刺さって痛い。
｢とにかく！中堂さんはAさんに感謝して、明日の解剖も仲良くお願いしますね｣
…感謝なんて。私は医者として感謝される資格なんてない。
だって、私はあの時。
彼女を助けることを躊躇したのだから。
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みーこ(プロフ) - アンナチュラル再熱して、読みにきました。木林さんとのやりとりに感銘を受けました、もし続きがあるのならば更新をお待ちしております、、！ (2022年6月1日 19時) (
レス) @page24 id: 71713ba9a2 (このIDを非表示/違反報告)
EL(プロフ) - なんだか急かしてしまってごめんなさい。素敵なお話なのでつい。のんびりお待ちしております。 (2020年10月26日 23時) (レス) id: 7933e3d246 (このIDを非表示/違反報告)
雪鳩(プロフ) - ELさん» コメントありがとうございます！私生活が忙しく執筆が遅れていますが、ゆっくり更新していくつもりなので気長にお待ちいただけると嬉しいです！ (2020年10月25日 2時) (レス) id: 76789842a1 (このIDを非表示/違反報告)
EL(プロフ) - 更新楽しみにしております。 (2020年10月18日 21時) (レス) id: 7933e3d246 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雪鳩 | 作成日時：2020年8月24日 0時
