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｢自 殺ではなく他殺だと？｣
｢そうです。この子が自 殺するなんて到底思えません｣
川野さんから警察の捜査資料を渡される。そこには、息子さんが1週間前に死体となって崖の下から発見されたこと、付近の防犯カメラには1人で歩く息子さんが映っていたことなどが書かれていた。
書類に目を通していると、特に目を引く記述があった。
｢息子さんはいじめられていた、と書かれていますが｣
息子さんは高校生で、学校でいじめられていたらしい。警察の聴取により学校側でもいじめを認めたため、それが自 殺したと判断する大きな要因になったようだ。
｢ですから、尚更自 殺ではないと言っているんです｣
｢…と、言いますと？｣
｢ほら、よくいじめの1つとしてあるじゃないですか。高い所から飛び降りさせられるいじめ。でも飛び降りた人が戻ってこず、怖くなっていじめた人が逃げるっていう、｣
｢確かにその可能性は否定しかねますが…｣
どこか確信的な言い方に違和感を覚える。川野さんは息子さんは自 殺でははなく殺されたのだと強く信じているようだった。
｢…恐れ入りますが、どうして息子さんが自 殺ではないと思うんですか？悲しいことですが、いじめは十分自 殺の原因となりえます｣
思わず口を挟んだ私の言葉に、川野さんはカッとなると興奮したように叫び出した。
｢私の息子は!!自 殺をするような子じゃないんです！
私はいつも息子に言っていました、
『逃げてはいけない』って！だから自 殺なんていう逃げをする訳がないんです!!｣
｢_______ッ!!｣
…逃げる。逃げ出す。
所長は興奮した川野さんを宥めようと何か言っている。だが、私は先刻の病院前での会話がフラッシュバックし、会議室の物音は何も聞こえなくなっていた。
『______君はいつも逃げ出してばかりだ_____』
嫌味たらしく耳元で発せられた医師の言葉。ミコトに心配をかけるきっかけになった、タクシー内でも頭から離れなかった言葉。
医師の言葉を聞いた瞬間、うるさいくらいに鳴いていた蝉の声は聞こえなくなった。彼の言葉だけが脳内に響き渡り、まるで時間が止まったかのような錯覚に陥った。
ここはよく冷えた会議室なのに、炎天下にいるかのような感覚になり、じわりと汗が滲んだ。
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みーこ(プロフ) - アンナチュラル再熱して、読みにきました。木林さんとのやりとりに感銘を受けました、もし続きがあるのならば更新をお待ちしております、、！ (2022年6月1日 19時) (
レス) @page24 id: 71713ba9a2 (このIDを非表示/違反報告)
EL(プロフ) - なんだか急かしてしまってごめんなさい。素敵なお話なのでつい。のんびりお待ちしております。 (2020年10月26日 23時) (レス) id: 7933e3d246 (このIDを非表示/違反報告)
雪鳩(プロフ) - ELさん» コメントありがとうございます！私生活が忙しく執筆が遅れていますが、ゆっくり更新していくつもりなので気長にお待ちいただけると嬉しいです！ (2020年10月25日 2時) (レス) id: 76789842a1 (このIDを非表示/違反報告)
EL(プロフ) - 更新楽しみにしております。 (2020年10月18日 21時) (レス) id: 7933e3d246 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雪鳩 | 作成日時：2020年8月24日 0時
