病院実習4 ページ38
「患者さんから荷が重い質問が来たら助けますから、オスキーの通り一度応対してみて下さい。まずは北峰君から。」
「は、はい…」
***
ガラ…
「失礼します…俺…私、富士赤大学薬学部の実習生…北峰で、す。本日は田中様の、お薬について説明…させていただきたくて寄らせていただきっ、まし、た。」
「はあ…」
完っ全に北峰君緊張してる…。
とその場にいる実習生全員が察した。頑張れ、頑張れ北峰君、と我が事のように心の中でエールを送る。
胃がんのおばあさんは、見慣れぬ実習生にきょとんとしていた。
「おかっ、お加減いかがですか…!!!」
「あぁ、あー、お若いなあ。体調はええよ。おかげさんやねぇ。」
「…!!!そ、そうですか……えっと…今回のお薬なんですが、今日からこの薬をですね…」
部屋に温かい空気が流れ、その場にいる全員でほっとする。
おばあさんは恐らく、私たちが実習生ということも含めて寛容に対応してくれたようだった。
「出るとすれば、吐き気、気持ち悪さがあるかと。そのことも含め、お困りのことがあればなんなりとおっしゃってください。」
オスキーの流れからは外れた、心からの指導。
北峰君の表情も、最初とは打って変わって優しかった…。
****
「皆さんうまいじゃないですか。まあオスキー制度が取り入れられたのは薬学部が6年制になってからですから私が知らないのも当たりまえなんですけどね。」
先生を筆頭に、私たちは同じ病棟の廊下を進んでいた。
周りの実習生の表情は優しそうだったり、複雑そうだったり。
そんな中、私の表情は恐ろしく固いはずだ。
「次はAさんですね。」
「…はい。」
「大丈夫。困ったらアイコンタクトくれたら助けるから。一応頑張って。実習生が入ることの許可はとってあるので。」
「はい。」
鈴木様の病室の前。
オスキーの流れを思い出しながら、カルテ内容を思い出しながら、そっと扉に手をかけた。
ガラ…
「鈴木様、失礼いたします。」
「んあ…?ああ。」
体重、年齢、性別くらいの容姿データしかなかった患者さんの姿を初めて見る。
鈴木さんは治療で消耗しているようだが、骨格は力強い壮年期の男性だった。
これが…初めての…服薬指導…。
ファイルを持つ手に力が入る。
話すことは、今日から新しく追加になったプレガバリンの作用説明と、予想される眠気の副作用と、それに伴う日常生活への注意喚起…それに副作用で困ってないかとか、ほかにも…
「…ははは。」
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ちよ(プロフ) - イラさん» イラちゃん…!ありがとう…!ほっこりしてくれたならよかった…!でもこっからは原作ネタの六つ子話とかも入れていく予定だからねww応援本当にありがとう! (2016年10月22日 21時) (レス) id: 7980a9d63a (このIDを非表示/違反報告)
イラ(プロフ) - お久しぶりに来たけど相変わらずほっこリする小説だよ〜!!人の温かみや辛さがひしひし伝わってきたよ!!ゆっくりで良いから頑張ってね! (2016年10月22日 16時) (レス) id: 1dff651d8b (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - わあ”!さきさん!!どんぴしゃですね!!笑 現役薬学生さんにコメをいただけるとは…!本当にありがとうございます!共感ほんとありがたいです〜><//(実習はもう終わられたのでしょうか(/ω\)) さきさんの大学生活も心の底から応援しております…! (2016年10月17日 23時) (レス) id: a6e972599e (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - (実際プロタミン聞かれたときに心臓が体外に吹っ飛ぶかと思ったよね…) (2016年10月17日 23時) (レス) id: a6e972599e (このIDを非表示/違反報告)
さき(プロフ) - 私某私立女子大の薬学生なのですごく共感できます!これからも頑張ってください! (2016年10月17日 22時) (レス) id: 1e3e119e4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちよ | 作成日時:2016年9月19日 20時