１０【おそ松さん】一卵性六つ子と処方箋10【逆ハー気味】

邁進8 ページ2

薬学4年生の12月。

私たちに"クリスマス"なんていう概念はなかった。
目の前に迫りくる、患者さんを想定した演技テストのOSCE(オスキー)、そして学術テストのCBTを前に緊張はクライマックス。

CBTの勉強を自分で進めつつ、オスキーの練習を友達と行う日々だった。

CASE1：
「本日はどうなさいましたか？」
「げほっ、ごほっ、風邪をひいてしまったみたいです…」
「今現在飲まれているお薬はありますか？」

CASE2：
「お加減はどうですか…？」
「病院の枕が合いません…眠れなくて」
「枕が合わなくて眠れないのですね…」


他の学生はCBTやオスキーが終わってから研究室生活が始まるというのに、
私が入った"癌"の研究室はすでにスタートしていて…
こうして"勉強"に配分する時間が他の学生よりも少ないのが現状だ。
…ま、まあ、それを覚悟して入ったわけだからガタガタ言えないけれど。

「…すごい…！！完璧！ 薬の調合さえミスらなければ今からでも受験できるんじゃない？……あれ、Aちゃんって患者さんへの応対苦手じゃなかったっけ？」

患者役の台本を片手に、親友が微笑んだ。
三柳(みやなぎ)友美(ともみ)、通称は"ともちゃん"。
黒髪の綺麗な女性で、加えて賢さは折り紙付き、という近くにいるだけで私が消し飛びそうな存在だけど…
彼女とは大学一年生から二年生の頃に固い友情で結ばれた仲だ。

「ん、でしょ。笑」

実技試験のオスキーは"薬の調合"と"患者さんへの応対"があるが、私は後者がすこぶる苦手だった。
周りが『兄弟』『親』と練習する中で、私は『一人暮らし』&『コミュ障』という残念な状態だったからかもしれない。



それでもそんな私が人並みに応対練習を頑張ることができたのは、
何を隠そう、"松野家の六つ子"さんたちのおかげだった。

長男から、おそ松さん、カラ松さん、チョロ松さん、一松さん、十四松さん、トド松さん。

今年の夏の始まりの頃から皆さんと練習させてもらったので、なんとかこの状態を保てている。
まぁ…押し倒されたり、練習とは明後日の方向へ話が進んでしまったりと色々あったけれど…！
元演劇部だったカラ松さんや、常識人なチョロ松さんを筆頭に、皆さんの助力で練習させてもらえたのだった。


「…もう明後日だね。」
「…だね。」
「明後日、オスキーがあって…年始にCBTかぁ。でもきっと私達ならいけるよ。」
「…ともちゃん…、…そうね、私も頑張る。」
「よっし。私も！」

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