... ページ35
「__あの!」
川上が駆け付けるとじゃあね、とちょうど友人と別れていた。乱れた呼吸を整えて声をかけると、その女性は振り返った。
「これ、貴方のスマホですよね」
『…あ、本当だ。ありがとうございます!』
どうやら川上が届けるまで気づいていなかったらしい。ラッキーだ、と言いながら女性は笑顔でスマホを受け取った。
「ありがとうございます」
『え、っと…?』
勢いよく頭を下げた川上に戸惑う姿からして、彼が川上だということがまだバレていなかったようだ。
「俺、川上です。すいません、さっき話していたの聞いちゃってました」
『あ…』
そして序でに笑ったのも俺です、と川上が言うと、Aは一瞬目を見開いてクスリと笑った。
『それはそれは、恥ずかしい姿を見せちゃってすみません』
「いえ。すごく嬉しかったんで」
『良かったです、一ファンの私がお役に立てたようで』
『スマホ届けてくれてありがとうございました。もしこのまま忘れてたら、タブレット持つことになってましたね』
「めっちゃファンやん」
恥ずかしそうにAが笑うと、それに釣られるように川上も笑った。午後10時、まるで世界は二人きりのように互いが見つめあった。
『…じゃあ、これからも頑張ってください。応援しています』
「ありがとう」
本当ならばAを送り届けたかったが、この後すぐにオフィスへ戻らなくてはいけなくて、川上はどうすることもできず立ち尽くしていた。
「…Aさん」
『はい』
「また、どこかで会えますか」
急に名前で呼んでしまったがこの際どうでもいいと思った川上は、意を決して伝えた。Aがふわりと笑う瞬間がスローモーションに見えた。
『じゃあ、会えたらスマホを川上さんに見せますね。もしタブレットだったら、そこは察してくれれば』
「__はい」
二人は反対の道へと歩いて行き、その足取りは互いに軽かった。
..
川上さん、ご卒業おめでとうございます。
悲しさとその他もろもろを込めて書かせていただきました。
私は変わらずお話を書き続けようと思いますので、ご理解いただける方のみこれからも読んでいただけると嬉しいです。
ちゃるちゃる
133人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「QuizKnock」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちゃるちゃる(プロフ) - いろさん» ありがとうございます〜!これからも温かい目で見ていただけると嬉しいです! (2020年2月22日 16時) (レス) id: d523c3bebb (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - 続編おめでとうございます!楽しみにしてますっ (2020年2月21日 6時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ちゃるちゃる | 作者ホームページ:
作成日時:2020年2月20日 17時