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『まだ今からでも遅くないから。3日で、少しでもやりたいことしようよ』
「じゃあ俺のこと名前で呼んでよ」
『はぁ?』
なんて言うと、案の定睨まれた。
『意味がわからねぇ』
「いいじゃん。減るもんじゃないし。ね?拓司って呼んでよ、この3日間」
『…分かったよ、呼べばいいんだろ呼べば』
ちょっと押したら簡単に折れてくれた監死官さん。意外と押しに弱いということが分かった。
どうしてこんなお願いをしたのかと聞かれたら、それは何となく。なんとなく、名前で呼ばれたいと思っただけ。
『ほら拓司。何かすることないわけ?』
「んー?うーん、俺が死んでも皆優秀だから、なんとか引き継いでくれると思うんだよねえ」
『そんなに信頼出来る人たちなんだ』
「まあね。俺が社長じゃなくたって全然やっていけるよ」
人間界のことをあまり知らない監死官さんのために、俺の仲間をつい自慢げに教えた。『分かったから。そんな仲間に残しておくこととかないの?』残しておくこと、か。
「うーん、ちょっと今はわかんねえ。一旦寝てから考えるわ」
『あ、ちょっと!おい!』
死神さんだけじゃなく監死官さんの手も煩わせることになりそうだけど、今はとにかく頭が回らないのだ。なにか後ろで文句を言っていたが、無視してホットアイマスクをつけてベッドにダイブした。
.
自分の死へのカウントダウンが迫っているというのに、相も変わらず朝というものはやってくる。そして、俺には任されている仕事がある。
正直言うと、この任されている仕事が中途半端に終わって死んでいくということ事態に悔いしか残らないのだが、もうそれはあと2日3日じゃどうにも出来ないこと。俺は今日も笑顔で収録に挑んだ。
『こんなに時間かかるのか、収録って』
今日の収録は2時間の特番だった。休憩も挟みながらで大体3時間半。終わって楽屋に戻ると監死官さんは現れた。
「見てたんだ。そうだよ?しかも本番に行くまでの間に打ち合わせだのセット組みだの沢山時間かかってるんだよ」
『これじゃ、拓司のやりたいことが全然出来ないじゃん』
「……」
どうしてこんなにも悲しそうな顔をしているのだろうか。所詮他人なのに。いくらなんでも肩入れしすぎじゃないのか。
「まぁ仕方ないし、収録は楽しいから。参加できたことが俺のやりたいことでもあったから」
そっちがそんな顔をするなら俺は笑顔でいなくちゃいけない気がして、お得意の嘘で軽く流した。
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ちゃるちゃる(プロフ) - いろさん» ありがとうございます〜!これからも温かい目で見ていただけると嬉しいです! (2020年2月22日 16時) (レス) id: d523c3bebb (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - 続編おめでとうございます!楽しみにしてますっ (2020年2月21日 6時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃるちゃる | 作者ホームページ:
作成日時:2020年2月20日 17時