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「宣伝かよ」
ふっ、と川上から笑いが零れた。うん、その顔の方がずっといい。
『ぜひ川上に読んでほしい』
「しゃーないから買ってやるよ」
『上からだなー』
本当は知ってるよ、私が掲載されている雑誌を全て買ってくれてること。だって私が川上のファンでもあるように、川上も私のファンだもんね。
.
「へえ」
『!?』
時は遡り、大学一年の時。私は集中してしまうと良くも悪くも周りが見えなくなってしまうクセがあった。この時はちょうど上手く自分の考えたストーリーが綴れてた時で、隣の人に見られているなんて思いもせずに書いていた。この講義の先生は、毎回一単元ずつ進めていき、余った時間で雑談をするという形式のため、終了10分前になるとお決まりの時間だった。
見られたことに気づいた瞬間、チャイムが鳴り講義が終了した。私はその人から逃げるように荷物を全部持って教室を出ていった。この講義は2限で、次は昼休み。駆け足で食堂へと向かった。この日はたまたま友達が3限からで1人寂しくカレーを食べることに。まさか見られたなんて、という絶望感で全然カレーが美味しく感じなかった。
「ねえ」
するとどうしたことか、さっきの隣に座っていた人が私の前に来た。こ、これは私の弱みに付け込んで脅すつもりなのだろうか。
『な、なに』
「これ。忘れていったやろ」
『あ…』
全部荷物を持ったつもりだったけど、肝心なスマホを置いていってしまっていたみたいで、わざわざ届けに来てくれたようだった。なんだ、私の思い違いか。
『あり、がとう』
「いや別にいいけどさ、そんなに見られたくなかったの?」
『……』
序のように向かいに座って同じくカレーを食べ始めたこの人は、さらっと触れられたくない話題を振ってきた。
「勝手に見たのはごめん。でも見えちゃったからしゃーないやろ」
そんな騙すほうより騙される方が悪いみたいな言い方しなくてもいいじゃないか。確かに講義中に書くことではなかったと思うが。
「その話、俺は好きやけど」
『…え?』
「元彼のことを忘れられない主人公に振り向いてもらおうと必死になって猛アタックするヒロインの姿がちゃんと書かれてて情景もめっちゃ浮かんできたよ」
てっきりバカにされると思っていたから思いがけない言葉に驚いてしまった。誰にも見せずにここまで来たから褒められて嬉しかった。だが、
『何全部読んでるの…!?』
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ちゃるちゃる(プロフ) - いろさん» ありがとうございます〜!これからも温かい目で見ていただけると嬉しいです! (2020年2月22日 16時) (レス) id: d523c3bebb (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - 続編おめでとうございます!楽しみにしてますっ (2020年2月21日 6時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃるちゃる | 作者ホームページ:
作成日時:2020年2月20日 17時