社員と社長→ izw ページ15
ピコン、と母親からいきなりこの人と今度お見合いだから!という文字を添えて知らない男性の写真が送られてきた。
嘘だろ、お見合いなんて昭和じゃあるまいし、なんてバカにしてたけど母親が昭和人間なのを忘れていた。
「『うわぁぁぁぁ』」
オフィスにいるというのにガッツリとプライベートで悩まされてしまい、一目も気にせず堂々と頭を抱えた。そしたら目の前にいた人も同じタイミングで頭を抱えていて思わずガン見をしてしまった。
『まさか編集長も頭を抱える時があるなんて』
「そりゃ俺にだってあるよ」
『お話聞かせてくださいよ。その代わり私も話すんで』
「やだよ」
ええ、だってこのタイミングで同じ行動するなんて奇跡じゃないか。それに気になるし。
そんな奇跡に乾杯、てことで互いに話すべきでしょう。
『じゃあいいです。とりあえず私の話聞いてくれません?』
「やだよ絶対話長いもん」
『伊沢さん程ではないのでご安心を』
ちょうど今私たちがいる場所にはタイミング良くほかの人はおらず、二人きりなので話すに適している。私は母親からの通知を切って座り直した。
『聞いてください伊沢さん。まだピチピチの20代を謳歌している最中なのにも関わらず、お見合いをさせられそうなんです』
カタカタとキーボードを打っている伊沢さんに向かって一方的に話し始めた。きっと傍から見たら聞いてなさそうに思えるけど、この人の聞き分け能力は素晴らしい。別のことをしながらもちゃんと話を聞いてくれる人なのだ。
「色々とツッコミどころが多いんだよな……で、お見合いすんの?」
ほら、ちゃんと聞いてくれている証拠に会話のキャッチボールが成立しているじゃないか。相変わらず手は動いていて、目も合わないけれど。
『そりゃしたくないですよ。写真送られてきましたけど好みじゃないし』
「じゃあどうすんの?」
『彼氏いるって言い張っても実際に会わせろとか言いかねないのでその線は保留にしてます』
「嘘つく作戦ね」
『カモフラージュするにも協力してくれる人見当たらないし』
「無理じゃん」
『そうなんです。困ってるんです』
「だから頭抱えてたわけね。女の子も大変だな」
はい、と頷きつつも嫌悪感からまた頭を抱えてしまう。何だかんだ言っておきながらも社員を心配してくれる優しい社長。一生ついて行きます。
『…伊沢さんが彼氏だったらハイスペなのにな』
「………じゃあ彼氏になろうか?」
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ちゃるちゃる(プロフ) - いろさん» ありがとうございます〜!これからも温かい目で見ていただけると嬉しいです! (2020年2月22日 16時) (レス) id: d523c3bebb (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - 続編おめでとうございます!楽しみにしてますっ (2020年2月21日 6時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃるちゃる | 作者ホームページ:
作成日時:2020年2月20日 17時