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次の日、寝て起きたら心身ともに回復していた。
事務所に連絡をしたら急ぎのスケジュール以外は別日に変更してもらったため、久しぶりのデスクワークだけの日になったのだが、今日は既にやることは決めていた。
「おはようございます……伊沢さん、どこか行くんですか?」
「ちょっと野暮用だよ」
何も知らない山上にそれとなく伝えれば、ぽかんとした顔のまま行ってらっしゃいと送り出された。
昨日の帰り際、用が出来たらいつでも来なよ、と名刺サイズの紙に住所と連絡先だけが書かれたものを渡されていた。肝心な名前が書かれてないけれど。
そして俺は一人でやってきた。
「昨日の今日で襲いにはこないと踏んでいるから、明日一日は一人で出歩いても害はないと思うよ」
まるで今日の動きが見透かされているかのように言われた言葉を思い出して歩いていたため、足取りは軽かった。あんなに信用してなかったのにどうしてか彼女の言葉は安心していた。情けねぇな、俺。
「こんなに朝早くから行動に移すのか。流石にびっくりしたわ」
欠伸を一つしながら彼女は迎え入れてくれた。ミクもなんだか眠たそうでいつになく大人しい。
「それで?今日は一体なんの用で来たんだい?」
「────助けてほしい」
「ほう」
すっかり目も覚めたのか、腕を組んで俺から言葉の続きを黙って待っていた。
「最初は貴方のことを信用してなかったし、正直いつ裏切られてもおかしくないと思っている。
でも、今の俺たちじゃ何も出来ない。それこそ誰かの手を借りないと解決できない領域にまで達している。
なら、全く知らない人に依頼するよりかはみんなが信頼しているAさんにお願いしようと思って」
この決断が凶と生むかもしれないが、今の不安すぎる状態から脱出できるならそれに越したことはない。みんなを守りたい一心だ。責任は全て俺が負う。だから力を貸してほしい。今までの無礼な態度を許してほしい。
今更ゴマを擦ったって仕方がないから飾らない口調で伝えた。土下座で済むもんなら喜んでするが、まずは頭を下げるところからした。
「君たちは全員似ているね」
「え、?」
「自分のためではなくてあくまでも仲間のため。仲間に迷惑をかけたくないから事件を解決させたい。そうやって皆訴えてきたんだよ、私に」
だからその言葉を聞くのももう…六人目。聞き飽きたよそれ。と彼女は笑い飛ばして言ってきた。
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通りすがり - 何度もコメントすみません。やっぱりこの小説好きです!いくらでも待つので、続きを期待してもいいですか? (3月15日 16時) (レス) @page34 id: c971cc1ca3 (このIDを非表示/違反報告)
凛(プロフ) - 作品の世界観が素敵で一話目からノンストップで読み続けてしまいました。続きがとても気になります。また、更新されることを願っております。 (2022年9月17日 23時) (レス) @page34 id: 766ff61372 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃるちゃる(プロフ) - トマトさん» ありがとうございます、、、!かなり更新ペースが遅いのですが、佳境に入ってまいりましたのでぜひ温かく読んでくださると嬉しいです!ありがとうございます!! (2022年6月20日 12時) (レス) id: 05ff2dafb9 (このIDを非表示/違反報告)
トマト(プロフ) - コメント失礼します!作品の雰囲気がめちゃくちゃに好きでずっと読んでいられました!もっと早くに出会いたかったです……一読者として応援しています (2022年6月14日 19時) (レス) @page33 id: 44a1cdd5e5 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃるちゃる(プロフ) - 通りすがりさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!返信遅くなってしまってすみません!相変わらずマイペースすぎる更新ですが何卒よろしくお願いしますー!!! (2022年3月1日 1時) (レス) @page28 id: 6736db345f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃるちゃる | 作者ホームページ:
作成日時:2021年11月18日 15時