Short Story × Songs 【QK】

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メイドに渡された仮面をつけて宮殿に入る。
ああ、彼と初めて会った時のことを思い出す。
彼となら、踊りたかったな。
また頃合いを見て独りになろう。そう思っていたら声をかけられた。


「姫」

『…タクシさん』

声は紛れもなく大好きな彼だった。
私と同じく仮面を被っているが、それでもわかる。
ああ、タクシさんだ。


「一緒に踊ってくれませんか？」

『もちろんです』

私に跪いて差し出した手を躊躇なく取る。
ずっと触れたかったタクシさんの体。
私たちは時を忘れて踊った。
お互いに、これが、最初で最後だと分かっていたから。









『来世では普通の人になりたいな』

「ああ、同じく」

『生まれ変わっても会いに行くから待っててね』

「待たなくていいよ。僕から会いに行くから」

『タクシさん、好きです』

「僕も好きだよ、A」


私たちの声は大音量に奏でられている音楽に消え去った。
そして、私の涙は仮面によって隠された。





あれからいくつもの年月が過ぎた。

私はただの大学生、貴方はクイズ王として。
結局生まれ変わっても王子とか王からは逃れられないみたいだね笑


記憶はほとんど消えてしまっても、運命なのは変わらなかった。


「待たせたね」

『ホント。めちゃくちゃ待ったわよ』

「これからは離さないから」

『あら？離れるつもりなんてこれっぽっちもないわよ？』


そっちこそ、覚悟しといてね。タクシさん。

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