39.「一生大事にする」 ページ39
JN side
『ね、見て。あの一人で座ってるペンギン、ジェミンに似てる』
「そこで喧嘩してるのはロンジュンとAじゃない？」
『一生泳いでるのがマク先輩かな』
「俺は？」
『ん〜、あ！ジェミンの傍で寝てる子』
Aは終始テンションが高くて、それが何かを隠しているような気がしたけど、
楽しい時間に水を差したくないから何も言わなかった。
一通り回り終わった後出口のそばにあるお土産ショップに立ち寄る。
ペンギンのキーホルダーがさっきAと見たのに似ていて、話しかけようと思って横を見ると、隣にいたはずのAがいなかった。
狭い店内をぐるりと一周するとタコのぬいぐるみとにらめっこするAを見つけた。
内心すごく焦っているのに、それが表に出ないとジェミンによく言われる。
Aの後ろ姿に声をかけるとびっくりした顔をした後、ほっとしたような表情で俺の名前を呼んだ。
「欲しいの？」
『うーん、でも部屋に他にもぬいぐるみあるし…』
「ふうん」
『え！ジェノ！何で取るの』
「買ってあげる」
『え〜〜、悪いよ』
「今日のお土産。これ見るたびに俺のこと考えてよ」
『…ありがとう』
嬉しそうに口をキュッと結んで上目遣いで俺を見上げるA。
………そんな顔で見るのは辞めてほしい。
このお店のもの全部買ってあげたくなってしまうから。
お店を出た後、俺のシャツの裾をくいっとAが引っ張る。
「ん？」
『ジェノに似てるなって思ったから』
「え」
『ぬいぐるみのお礼！大事にしてね』
「、もちろん、一生大事にする」
『一生〜？大袈裟だなあ』
手渡された小さい袋を開けると、クラゲのキーホルダーが入っていた。
Aは笑ったけど、好きな子から貰ったものを大事にするのに一生なんて足りないくらいだと思う。
いつの間に買ったんだろう。
胸の奥の柔らかいところがきゅうと締め付けられていくような感覚で息が詰まり、
時間が止まって周りの音も聞こえなくなる。
「ジェノ？早く行こう」というAの声で
俺はやっと動き出すことが出来た。
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作者名：ロク | 作成日時：2022年5月8日 2時
