硬貨35枚 ページ36
『ジャック、ちょっと』
ジャック「ん、何だ」
『制服解れてるよ』
Aは制服のジャケットを指差す。
が、当然ジャックには伝わらない。首を傾げながらジャケットを脱ぐと、裏の裾の方に小さな穴が開いていた。
どこかに引っ掛けた拍子に解れたのだろう。
指摘されたはいいが、自力では直せない。裁縫道具なんて寮にも置いていない。
まぁいいか、なんて考えているとAはジャックの腕を引いた。
『直してあげる！さ、行こ！』
ジャック「は？あ、おい！」
もちろん腕を振り払うことは容易い。だがジャックはそれがどうしてもできなかった。
目下で嬉しそうに揺れる尻尾を見てしまったから。
きっと無理に断ったら尻尾も耳も垂れてしまう。
頭の中でもっともらしい言い訳をつけて、空き教室へと足を踏み入れた。
向かいに座り、ポケットから裁縫道具を取り出す。
慣れた手付きで針穴に糸を通すのを、ジャックは感心しながら見つめていた。
ジャック「…器用なんだな」
『こんな微々たるもので貰えるお金は小額だけどねぇ』
滑らかに縫う。初めて見る器用な手付きには脱帽だった。
Aの生活力がこんなにも高かったとは。
『小さい時はね、布切れを繋ぎ合わせて人形サイズの服作ってたんだぁ。人形なんか持ってなかったけど』
ジャック「！！ふ、服も作れんのか…！」
『ヒャハ、反応が新鮮〜！大きいサイズはどうだろう、出来るのかなぁ』
遠くて近い記憶に思いを馳せる。
作るのが楽しすぎて、自分の服を何度裁ったことか。切ったその部分もリメイクしていたな、懐かしい。
『…将来服とか作る仕事に就きたいんだけどね〜。ちょっと無理かな』
2人にしか聞こえないくらいの声量でそう言った。
無理な理由はきっと、以前言われた"僕なりの事情"ってやつだ。それくらいはわかる。
頑張れ、なんてのは無責任だろうか。
そんなことない、は失礼にあたりそうだ。
どう声をかけるべきか悩んでいるうちに、ジャックの制服は元通りになっていた。
ジャック「…！今、手持が、」
『友達にはお金せびらないよ！いつでも言ってね、ストレス解消になるから！』
楽しそうに笑って教室を出ていった。
最後に見えた尻尾は千切れんばかりに揺れていた。それに呼応するように、ゆらりゆらりと己の尻尾が揺れる。
ちゃんと話したのは何時ぶりだろう。
エペルに向けていたような純粋な笑みを自分も見れた。小さな喜びが胸を占めた。
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しお(プロフ) - 完結おめでとうございますっ作者様の作品どれも大好きです！！ほんとにどタイプです(; ;)新作も楽しみにしています！頑張ってください！ (2020年8月17日 18時) (
レス) id: 555d662f3a (このIDを非表示/違反報告)
ぱるこ氏(プロフ) - 完結おめでとうございます！！すっごく読んでいて楽しい作品でした！またどこかで貴方様の作品に出会えますように（＾ν＾） (2020年8月16日 22時) (レス) id: f3351ce51f (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - とても面白いです。この作品が更新されるのを毎日心待ちにしてます。更新大変だと思うので作者様なりのペースで頑張ってください！応援してます。 (2020年8月7日 22時) (レス) id: 9f253d2950 (このIDを非表示/違反報告)
諒(プロフ) - イライ&ナワーブさん» ご指摘ありがとうございます！お手数ですが、誤表記の話数をお教えいただけませんか？ (2020年8月7日 22時) (レス) id: 20c69aa8ad (このIDを非表示/違反報告)
イライ&ナワーブ - とても面白いと言うかBL最高！ (レオンではなくてレオナですよ) (2020年8月7日 21時) (レス) id: 1da65a8f09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：諒 | 作成日時：2020年8月2日 13時
