202.王と狩人 ページ36
「お招きありがとう!」
喜色をたたえて帽子を胸に当てて礼をするルークに、アルタイルは有り得ないものを見る気持ちでいた。
嫌々、なんなら泣きながら入室してきた生徒しかほぼ見たことがなかったのだ。
ありがとう、なんてどこか可笑しいとしか思えない。
...と、ふんだんに自虐の意を込めた思考をする。
彼は宙を浮くティーカップの構造を魔法分析学的に分析して、目を輝かせて受け取った。
『...君はまだシェーンハイトの側にいるのか?』
「ウィ。彼は本当に寛大だからね。」
いつもの舞台俳優の如く大袈裟までの発声や身振り手振りを無視して、アルタイルは甘い紅茶をすする。
『私なら確実に追放だが。命拾いしたな、ハント君。』
「...確かにキミならそうするだろうね、
ハンターグリーンの切れ長の目を不意を突かれたように見開いた後、髪を揺らす。
「だが私は...」
『ネージュ・リュバンシェも美しいと思った、だろう。...君は美しいものに目がないし、その本質をも理解した上でそう断じているということは知っている。』
そして、ルークが嘘をつけないことも。
かの伝説の鏡のように、時に残酷なまでの真実を告げてしまうのだ。
素直さは彼の美点であるが、場合によって口を噤まなければならないときもある。
何故なら、ルークは''人間''だから。
『鏡のように真実を馬鹿正直に告げるのは悪いことではないが、君はそれによってただでさえ闇に堕ちかけていたシェーンハイト君を突き落とした。』
「...え?」
口から零れた息は、言われたことが飲み込めなかった故のものではない。
アルタイルの言葉はしっかりと彼に刺さっていたが、そうではなく。
どうして目の前の人は、あの時のことを知っているのだろう。
確かにあの場にはいなかったはずなのに。
と、アルタイルと風の精霊との関わりを知らないルークは背筋に寒いものを感じて生唾を飲んだ。
自分の行動が全て他人に筒抜けであることへの、本能的な嫌悪感と恐怖だ。
『少なくとも君は意思と良心を持つ人間なのだから、側近の、他より目をかけられている君によって彼がどうなるかを考えてから行動するべきだ。』
「ああ。...肝に命じておくよ。」
ルークの感情の変化には気づいたものの、話自体は聞いているだろうから、それを知らない振りをして話を続けた。
神妙な面持ちでいるルークに退室を促せば、「好奇心を抑えるように」言われたばかりの彼は礼の後大人しく帰っていった。
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猫やぎのサブ(プロフ) - コメント失礼します!陽炎さんの作品とっても大好きです!アルタイル様のイメソン‥「1000年生きてる」如何でしょう、、 (1月7日 11時) (レス) id: 497823dae0 (このIDを非表示/違反報告)
シキ(プロフ) - もうコメントするの遅すぎたと思いますが…「The Beast」いいと思います!! (2023年1月16日 22時) (レス) @page29 id: f878b3efd0 (このIDを非表示/違反報告)
あなたの心にAmazing - アルタイル様は...私的にピッタリだなぁって思ったのが、まふまふさんの「空腹」です。胃というところで共通点があるのと、歌詞にも「愛を知らない」、「化け物」というワードが出てきたり...他にもアルタイル様と重なる歌詞がたくさんです。いい曲ですよ! (2022年12月24日 22時) (レス) @page29 id: 4aeec97b35 (このIDを非表示/違反報告)
スミィス - アルタイル様は「オレンジ」って曲、どうでしょうか…大好きです!! (2022年11月9日 18時) (レス) id: f06ecf8049 (このIDを非表示/違反報告)
莉緒(プロフ) - 初コメ失礼します!!アルタイル様ガチ勢です!!アルタイル君世界で一番愛してる自信あります!!アルタイル様のイメソンで、まふまふ様の「廃墟の国のアリス」とかはどうでしょう、、、? (2022年9月18日 19時) (レス) @page29 id: f2671d43ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:陽炎 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kagerouhp/
作成日時:2022年2月10日 22時