188.王と刹那の会話 ページ19
それからライバル校の生徒会長同士で固く握手をし(互いの指をへし折ろうとするための固さである)、ヨハンはどこかへ歩いていった。
「...俺、あの人嫌い。」
『...どんな相手にも態度を変えるなよ。彼は、腐っても貿易相手国の王子だ。』
非常識で失礼な人間が去っていった時、残された場には微妙で虚無的な空気が漂う。
決別したはずの兄弟は無気力なまま、奇しくも嫌な相手のお陰で棘のない会話を交わした。
『慣れておけよ。彼でなくても、これからあのような呆れ果てた人間に会うことがあるだろうから。』
「うん。...でも、これからも兄さんが助けにきてくれるなら安心かな。」
『...』
アルタイルは何も言えなかった。
否、言うことが出来なかった。
可愛い弟の甘えに頷けたなら、兄さんに任せておけと言えたなら、どれだけよかったか。
だが、それでは駄目だ。
お前はこの先、1人だけで生きていかなければならないんだ。
「ね、兄さ＿＿」
「ヴェーガ！」
きん、と頭に響く声が耳を刺す。
スカートを揺らして駆けてくるこの学園唯一の女子生徒に、2人は浮気を目撃された時のように距離を取った。
肩で息をしながら彼女はきっとアルタイルを睨みつけ、ヴェーガの側に立つ。
彼らにつかの間存在した穏やかな空間が霧消し、夢から目覚めたように引き締まる。
それをヴェーガだけでなくアルタイルさえ残念に思った。
「またヴェーガに酷いことを言っていたんですか？」
「ユウちゃん、違うよ、あのね...」
自分が正義で相手が悪だと決め付け、想い人を守る強いプリンセス気取りの女は嫌に堂々としている。
今回に関しては確実に彼女の勘違いであるのを知っている身としては、ユウは実に滑稽で愚かだ。
アルタイルにとってヴェーガは遠ざけなければならない相手だが、腹の立つヨハンのお陰で折角やって来た、弟と穏やかに話せる時が終わってしまった。
自分でさえそのヴェーガに自然と返事をしてしまうほど、ナチュラルに話せるタイミング。
最後の最期のチャンスが終わった。
もう話せない。
また遠ざけなければならない。
心地よかった刹那に別れを告げなければ。
名残惜しさをヴェールの向こうに押し込んで、氷の顔を張り付けて。
『甘えるなよ、ヴェーガ。』
冷たく刺すような視線で弟を射抜いた。
びくりと跳ねた肩に、いつの間にかやって来ていた彼の寮長が手を置く。
決意を固めていたにも拘わらず、1度だけと普通に接した甘い自分に吐き気がした。
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猫やぎのサブ(プロフ) - コメント失礼します！陽炎さんの作品とっても大好きです！アルタイル様のイメソン‥「1000年生きてる」如何でしょう、、 (1月7日 11時) (
レス) id: 497823dae0 (このIDを非表示/違反報告)
シキ(プロフ) - もうコメントするの遅すぎたと思いますが…｢The Beast｣いいと思います！！ (2023年1月16日 22時) (レス) @page29 id: f878b3efd0 (このIDを非表示/違反報告)
あなたの心にAmazing - アルタイル様は...私的にピッタリだなぁって思ったのが、まふまふさんの「空腹」です。胃というところで共通点があるのと、歌詞にも「愛を知らない」、「化け物」というワードが出てきたり...他にもアルタイル様と重なる歌詞がたくさんです。いい曲ですよ！ (2022年12月24日 22時) (レス) @page29 id: 4aeec97b35 (このIDを非表示/違反報告)
スミィス - アルタイル様は「オレンジ」って曲、どうでしょうか…大好きです！！ (2022年11月9日 18時) (レス) id: f06ecf8049 (このIDを非表示/違反報告)
莉緒(プロフ) - 初コメ失礼します！！アルタイル様ガチ勢です！！アルタイル君世界で一番愛してる自信あります！！アルタイル様のイメソンで、まふまふ様の「廃墟の国のアリス」とかはどうでしょう､､､？ (2022年9月18日 19時) (レス) @page29 id: f2671d43ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：陽炎 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kagerouhp/
作成日時：2022年2月10日 22時
