通訳者が1人 ページ3
Aside
「貴方が噂の通訳者！？」
『うん、そう呼ばれてるみたいだね』
ハートのスートを描いている子が驚いたように聞いてくる。スペードのスートを描いてる子ともふもふの子は、状況を理解できていないのかハテナを浮かべている。もう1人の子は物珍しそうな顔でこちらを見ている。
イグニハイドだから食堂に来てるのが珍しいのかな？と呑気に思っていたらハートスート君が口を開いた。
「俺……その通訳者は、ムキムキのゴリマッチョって聞いてたんだけど……」
『脚色されすぎじゃない？』
誰のどこ情報だよ、とツッコミを入れたかったがやめておいた。おそらく双子から始まり、彼らに怯える生徒たちが徐々に脚色していったのだろう。良い迷惑だな。
『まぁ、俺はこの通りヒョロガリですので。ご安心を。』
そう言って、思いついたように先程サムさんのショップで買った個包装のチーズケーキをそれぞれのお盆の上へ置く。俺の噂をしているときに丁度俺が通りかかるなんて、何かの縁だ。ご来店100人目のお客様、的な感じのサービスであげちゃおう。
「このチーズケーキ…」
「ちょっとお高いヤツなんだゾ」
『良かったら貰って』
スペードスート君ともふもふ君が連携したようにそう言った。勝手にあげちゃったけど、アレルギーとか大丈夫かな。
俺が“あげる“と言うと、そう考えるのなんて馬鹿げてくるみたいに喜ぶ3人と1匹。
「マジ？やった！」
「あざッす！！」
「美味そうなんだゾ！」
「前々から食べてみたかったんだ！」
反応がフレッシュというか、眩しいというか……何だかふわふわした幸福感が身を包む。可愛いなこの子達。
そういや、どこの寮の子だろう。と彼らの腕を見てみる。
スートを描いた2人はハーツラビュル寮。ローズハート君のところか、しごかれてるだろうな。
残りの1人と1匹は何も腕にしていなかった。あぁ、噂のオンボロ寮生か。監督生君とグリム君か、成る程。
そう1人で考えていると、友達が遠くで自分の名前を呼んだ。
「Aー！！」
『いっけね。バイバイ、未来ある少年たち。』
「いや貴方も充分未来あるでしょ」
「あ、そういや、名前…」
ハートスート君に的確なツッコミを入れられ、やるなぁと思っていたらスペードスート君が名前を聞いてきた。
『あぁ、A・カーライラルっていうの。以後、お見知りおきを。』
そう言い残し、足早に友達の方へ向かった。
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作者名：青天の霹靂 | 作成日時：2023年11月18日 18時
