P−19◆突然のスポットライト ページ22
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「はっ!」
「ぎゃああーー!!」
また、アズールの放つ魔法がグリムの足元にぶつかる。
彼らならば一撃でグリムの動きを止めることも難しくないだろうに、敢えてじわじわと追い詰めているのは嫌がらせの一種か何かなのだろうか。
何にせよ、「オレ様はつえー」ところを大勢の目の前で見せびらかせたかったのであろうグリムにとって、今のこの状況が限りなく屈辱であることに違いはない。
魔法を放つ片手間に、リドルがちらりと横で小走りするアズールを見る。その視線には明らかに呆れの色が濃く混じっていた。
「アズール、遊びが過ぎるんじゃないのかい?」
「ふふ、リドルさんこそモンスターをいたぶって楽しんでいるのでは?」
「ボクはキミとは違う。くだらないことを言っていないで行くよ」
「あわわわわわ……!!」
アズールを軽くあしらったリドルは、そろそろ終いだとばかりにグリムとの距離を詰めていく。
一方のアズールは、つれない人だとでも言いたげに視線を逸らすとリドルの後を追った。
──まずい、やばい、どうしよう。そんな動揺を露わにしながら、グリムは四足歩行で鏡の間を駆け回る。
すっかり普通にこの一連の追いかけっこを眺めていたAは、そんなグリムが自分の方へと迫ってきていることに数秒遅れで気が付いた。
「あれっ……たぬ──グリムとかいう子、こっちに来てるような……?」
気のせいかな、という気休めは、グリムとの距離が段々と縮まっていくごとに意味を成さなくなっていく。まさか自分がこの騒ぎに巻き込まれるとは、Aだけではなく新入生一同誰ひとり思うまい。
──来て……る、ねこれ。
「観念するんだね。さもなくば──」
「嫌だ! オレ様はこの学校に入るんだーー!!」
こうなればもはやヤケだ。
グリムは大きめの歩幅で助走をつけてから、地面を勢いよく蹴り上げてAの方へ向かって跳んだ。
「うっそ!?」
優しそうな雰囲気のAに縋りついて仲介してもらおうと思ったのか、単に進行方向にいるのが邪魔で突き飛ばそうとでもしたのか、あるいは本当に何の考えもなくただ跳んでみたのか。
絶対にこんなことを考えている場合ではないのに、体を動かすべき時なのに、Aの頭は勝手に意図しない方向へ回り始める。エースが名前を呼ぶ声がやけに遠くから聞こえたような気がした。
「!! キミ、退がって──」
退がる、そう、退がらないと。
グリムが「せめてコイツだけでも道連れに……!」みたいな、追い詰められた犯人さながらの傍迷惑な考えを実行しようとしているかもしれないのだから。
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ヒメアミ(プロフ) - もちうさぎさん» お話が進んだりユニーク魔法とかがお披露目になったりすると多分速攻でバレる(?)と思うんですけど、一応某塔の上のプリンセスを元ネタにしてます……!😌 (2023年4月9日 14時) (レス) id: 773d896b8c (このIDを非表示/違反報告)
もちうさぎ - 夢主ちゃんのモデルって誰ですか! (2023年4月9日 5時) (レス) id: c2ca67a91e (このIDを非表示/違反報告)
ヒメアミ(プロフ) - ゆあさん» マジですか何よりでございますわ!!🥰彼にはただのマブで終わらず頑張ってほしいですね(誰目線?) (2023年4月7日 17時) (レス) id: 773d896b8c (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - もう今回も最高でございましたわ!エースと仲良くなっちゃって!そのままくっつけー!!という願望 (2023年4月6日 22時) (レス) @page20 id: ce509c1850 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメアミ(プロフ) - ゆあさん» コメントありがとうございます!! 続け方には気を付けてるのでそう言っていただけて何よりです〜〜😭 頑張ります!!💪🏻 (2023年4月4日 12時) (レス) id: 773d896b8c (このIDを非表示/違反報告)
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