【ツイステ】 Stoneface__BORDEAUX.【男主】 (ページ15)

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彼が来るたび、俺は学校であったことを話した。
教科書が破られたとか、体操服が無くなったとか、怪我をしたとか。

もちろん悲しい話ばかりじゃない。ぬいぐるみの話だってした。
当時は何となくでしか腹話術はできなかったけど、それでも優しい目をして俺のことを見てくれた。

誰かに話を聞いてもらえることが何より嬉しくて、日が沈む前まで話していたっけ。

その後、クルーウェルさんが父さんが作った靴のリピーターであることを知った。
偶然って結構身近にあるものなんだな。

毎日苦しい日々を過ごした。
我慢して、我慢して、ようやく報われたのだと思った。
ジェロディが転校してきた。そして、嫌がらせを受けている俺の味方をしてくれた。

「ライヴのそれ、可愛い！」

初めて認められた。"可愛い"って。
変じゃないか聞いたら、"それも個性"って。こんな嬉しいことは無い。
その時俺は、嬉しすぎて涙を流したくらいだ。

「ライヴは腹話術もできるんだー！すごいな！」

『ちょ、っと、しか、できなぃ』

「すごいすごいー！もっと聞きたいー！」

俺が腹話術をすればジェロディが喜ぶから、ずっと練習した。
初めてのときよりずっと上手くなった。それはもう本職の人に匹敵するほど。
その頃には自分で喋るのが億劫になっていた。両親と、ジェロディと、クルーウェルさんにだけは自分で話した。お世話になってるからね。

ジェロディの話はクルーウェルさんに話した。
よかったなって笑ってくれた。
それから毎日が楽しくて、あんなに嫌だった学校も自分から行きたいと思えるくらいになった。

授業が、昼休憩が、放課後が、ジェロディのお陰で眩しいくらいに輝いていた。
向こうの親御さんも俺のことを受け入れてくれた。親同士も仲良くなった。

徐々に明るくなっていく俺。ずっとそばにいてくれるジェロディ。
クラスメイトはそれをよく思わなかったんだろうな。
自分たちの玩具(オモチャ)を取られたんだ、つまらないと思うだろう。

標的が俺からジェロディへと移り、また地獄の日々が始まった。
それでもジェロディは明るく振る舞ってた。

手中にあった幸せはみるみるうちに零れ落ちていく。
俺が何をしたって言うんだ、悪いことなんて何もしてないのに。

じわりじわりと広がるボルドー色。
目下には、血を流して横たえるジェロディの姿があった。

幸せって儚いんだなと回らない頭でそう考えていた。