はじめまして名探偵さん ページ23
「君は全く困った男だなあ、織田作。」
治が笑う。織田作は、倒れる刺客を見ながら呟いた。
「弑したのか?」
「ああ、生け捕りにしても無駄だからね。何しろ奥歯に仕込んだ毒薬の味が大好きな奴等なんだ。ねえ、A?」
「……怒ってる?」
問い掛ければ、治はきょとんとした顔をした後、真逆。と言って嬉しそうに笑う。
「私が一度でも君に不満を言ったことがあったかい?」
「脅された事なら何度か。」
そう返せば、彼は肩を竦めた。
それから笑みを崩さずに織田作に問う。
「織田作は?怒ってる?」
彼は答えない。治はもう一度笑った後、駄々をこねる子供に言い聞かせる様に続けた。
「…君の信念を曲げた事は済まないと思ってる。でもさ、いくら織田作でも、弑さないなんて無理だよ。」
彼は俯く。それから何かに耐える様に拳を握りしめて、静かに一言こう言ったのだ。
「嗚呼………その通りだ。」
・
・
私は路地裏から出て、街を歩いていた。
適当に歩き、途中で見つけた公園にふらりと立ち寄る。
平日の真昼間にも関わらず、人一人居ないその公園は、思考を巡らすのにうってつけだった。
ベンチに座り、伸びをひとつ。
木漏れ日の美しい自然豊かなその場所で、私は揺れ動く影をじっと見つめていた。
「君、此処が君の人生の岐路だって事、判ってる?」
声を掛けられ、顔を上げる。
目の前には、小説の中の探偵の様な身なりをした見知らぬ糸目の男性。
私は首を傾ける。
彼は一体何者だろう?更なる刺客だろうか。
「君は今、とある人物について頭を悩ませている。…男性だね。そんな男、さっさと忘れた方が君の為だよ。」
心を読んだかの様にスラスラと言葉を述べる彼に、私は大きく目を見開いた。…この男、刺客よりも厄介かも知れない。ーー異能力者か?
「そのピアス、彼からの最後の贈り物だね?悪い事は言わないから、そこの塵箱に捨ててから帰りなよ。それにはねえ」
「GPSが付いている、ですよね。」
呟けば彼はほんの少しだけ目を見開き、私と視線を合わせた。
彼の瞳は全てを見通すかの様に澄んでいる。
「……ふうん、分かってて着けてるなんて君も物好きだねえ。」
興味を失ったかの様な声に私は珍しく困惑した。彼が何故私に話し掛けたのかが全く分からなかったのだ。
「あの、御名前をお伺いしても?」
問うて見れば、彼は笑った。
「僕の名前は江戸川乱歩。世界最高の名探偵さ!」
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ゆー - 初見です!すごくおもしろいです!!!更新頑張ってください!待ってます! (2018年5月17日 12時) (レス) id: bf6bf64614 (このIDを非表示/違反報告)
じゅき(プロフ) - 碧さん» コメントと優しいお言葉をありがとうございます…!更新再開させて頂きました。良ければまた読んで頂けると嬉しいです…! (2017年12月11日 18時) (レス) id: 15f8ca2f69 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - いつも楽しく読ませていただいています。ゆっくりでも全然大丈夫ですから、体調に気をつけて頑張ってください!応援しています! (2017年11月27日 18時) (レス) id: 16d028813b (このIDを非表示/違反報告)
じゅき(プロフ) - 天衣失格さん» ありがとうございます…その様にお褒め頂き恐縮です……!これからもこの小説をどうぞ宜しくお願い致します! (2017年11月18日 20時) (レス) id: 1989906b38 (このIDを非表示/違反報告)
じゅき(プロフ) - マイさん» コメントありがとうございます!楽しみにして下さっているのですか……!更新頑張りますね! (2017年11月18日 20時) (レス) id: 1989906b38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:じゅき | 作成日時:2017年11月12日 21時