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考え事は足を遅くする ページ20

走りながら私は考える。
あのスナイパー、すぐに標準を変えて私を撃ってきた。なんとも恐ろしい技術である。それに加えて標的を外したと見るや直ぐに撤退する判断力。明らかに手練れだ。


考えを巡らせていれば、彼は治らしき人物に電話をかけながらアクロバティックな動きで下へ下へと降りていく。
…走ることに集中しなければ置いていかれてしまいそうだ。
私は一旦考える事をやめ、足を必死に動かすのだった。






「織田作!そこ、右!!」

結局並行して走ることは出来ず、後ろから彼に声をかける。右に曲がった彼の後を追えば、人気の無い路地裏についた。

そのまま真ん中辺りまで走って行けば、唐突に物陰から人間が飛び出してきた。襤褸(ぼろ)を纏った見覚えのある姿。
私が目を細めたと同時に男が織田作にナイフを振った。彼は其れをやすやすと避けてから背中の銃を引き抜き、敵に威嚇射撃をする。


「動くな!」

織田作が声を張り上げるも、彼はジリジリと此方へ近寄ってくる。
優しい織田作の代わりに私が撃とう。と、自動拳銃を引き抜いた時、背後から発砲音。銃身への唐突な衝撃に私の手は拳銃を手放した。




ーー(まず)い。

後ろを振り返れば、案の定。足を上げて今にも私を蹴り飛ばそうとしている男の姿が。後ろに下がる事で其れを躱せば、彼も後ろへ跳躍し、間合いを取り直した。


挟み撃ちになってしまった。
内心舌打ちをしつつ、思考を巡らせる。逃げようとしない所を見るに、狙いは私たちだろうか?否、スナイパーがいた所を見るに恐らく金庫なのだろう。何故なら私達の今日の行動は唯の思い付きなのだから。






さて、リベンジマッチかな。

心の中で呟きいてから私は薄く笑う。
生け捕りにして、今度こそ私の手で拷問を、



駆け出そうと一歩踏み出した私の首根っこを誰かが掴んだ。もう一方の手が、私の視界を遮る。
突き飛ばそうとしてーー手を止めた。鼻腔を擽る煙草の臭いが特徴的な織田作の匂い。




「織田作、A!屈め!!」


聞き慣れた声がそう叫んだ直後、パァン、という閃光手榴弾の派手な破裂音が。そこで私は漸く彼の行動の意味を理解する。





織田作がそっと手を離した。

後ろから聞こえ始めた継続的な銃声と共に真っ黒な服を着た彼が声を発する。



「二人とも、怪我は無い?」


治が優しく微笑めば、魔法の様に銃声が止んだ。

気紛れに振り返って見れば、色の無かった路地には二つの真っ赤な水溜りが出来ていた。

番外編 特別な夜→←必然を避ける力



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ゆー - 初見です!すごくおもしろいです!!!更新頑張ってください!待ってます! (2018年5月17日 12時) (レス) id: bf6bf64614 (このIDを非表示/違反報告)
じゅき(プロフ) - 碧さん» コメントと優しいお言葉をありがとうございます…!更新再開させて頂きました。良ければまた読んで頂けると嬉しいです…! (2017年12月11日 18時) (レス) id: 15f8ca2f69 (このIDを非表示/違反報告)
- いつも楽しく読ませていただいています。ゆっくりでも全然大丈夫ですから、体調に気をつけて頑張ってください!応援しています! (2017年11月27日 18時) (レス) id: 16d028813b (このIDを非表示/違反報告)
じゅき(プロフ) - 天衣失格さん» ありがとうございます…その様にお褒め頂き恐縮です……!これからもこの小説をどうぞ宜しくお願い致します! (2017年11月18日 20時) (レス) id: 1989906b38 (このIDを非表示/違反報告)
じゅき(プロフ) - マイさん» コメントありがとうございます!楽しみにして下さっているのですか……!更新頑張りますね! (2017年11月18日 20時) (レス) id: 1989906b38 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:じゅき | 作成日時:2017年11月12日 21時

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