或る男の夜 ページ36
「そろそろ潮時、かな？」
人虎を取り逃がした、その報告を聞いた森鴎外は一人、口角を上げて呟いた。
キチッと纏められた報告書を見やり、2つの名前に指を這わせる。
「�狢精房��甅犁伐�A�瓠弔�。私の部下達は今も変わらず優秀な様だねえ。」
くつくつといきなり笑い出した男に、幼い少女は眉をひそめた。
「リンタロウ、気持ち悪い。」
「酷い！？…でもね、此れを聞いたらきっとエリスちゃんも喜ぶと思うよ？」
視線を画用紙へと戻し、興味無さげに�牴燭茘瓩頒譴�少女。そんな姿も愛らしい、という様にうっとりと彼女を見つめた後、にこりと貼り付けたような笑みを作って男は言うのだ。
.
「Aお姉ちゃんが、お仕事から帰ってくる。」
数秒の沈黙。
大きな目を、更に大きく見開いて。手に持っていた真っ赤な
「…私、さっきのドレス着るわ！リンタロウ、私をとびきり可愛くして！最高に可愛くなってからAに会うんだから！！」
「エリスちゃん……！！」
ぱああっと花が開くような無邪気な笑みを浮かべた悪の組織の首相の手にはいつのまにか小さなドレスが握られている。
彼の手に握られたそれを一瞥した後、彼女は良い案を思いついたと言わんばかりにこう言うのだ。
「私、Aと同じドレスを着る！」
「よし、直ぐに用意しよう。」
彼がすっと手を上げれば、一人の部下がお辞儀をした後部屋から静かに出て行く。
上司の奇行にも厭な視線一つ、文句一つ言わない良く出来た部下だ。
部屋の外に出た彼は、誰にもバレないように、ひっそりと息を吐いた。
マフィアの夜は、長い。
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革ベルト
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作者名：じゅき | 作成日時：2016年6月29日 20時
