サディスト少女は今日も今日とて、【文豪ストレイドッグス】 (ページ35)

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第31話ページ35

「酷い……与謝野先生酷い…。襲撃されたからって解剖中の患者を置いていくなんて……。私もう駄目かと…！」

「太宰に甚振ってやってくれと頼まれたもんだからねェ。いい具合に瀕死になれて、丁度良かったじゃないか。」

「一寸、冗談抜きで死ぬかと思いましたよ！」

身体の傷の代わりに心に傷跡(トラウマ)を作ったらしい彼女からは、普段の口調や表情が抜け落ちていた。

珍しいな、なんて思いつつその方が可愛らしいのに。なんてどうでも良い事も考える。

そこまで考えてから苦笑い。
いや、Aさん弱ってるんだよな。可哀想か。

「敦君…」

本人から声をかけられて、慌てて返事をする。この行動だって、何時もは怪しむ筈の彼女は何事も無かったかのように呟いた。

「探偵社にいる間は、怪我。しちゃ駄目だからね…！」

「あ、それ谷崎さんにも言われました……」

…かなり、お疲れの様だ。

「こら！案内係！！もたもたしてないで行くよ！」

「あ、すみません…！今行きます！」

乱歩さんに声をかけられ、慌てて返事をすれば。その声を聞いた彼女も何故か慌てだした。

「えっ、乱歩さん！？わ…私は……！？」

「…Aには特別休暇を与えよう！僕に感謝してね！」

乱歩さんの素敵な笑顔とは裏腹に、彼女は目を見開いてショックを受けている。

しかし、それも一瞬で直ぐに表情を変えたAさん。半分睨む様な、そんな視線の先にはテキパキと片付けをする彼が。

冷めた声で、彼女は問う。

「……国木田さん？」

「新人教育だ。」

「へえ。…ちなみに、貴方の予定を狂わせた私に対する恨みは？」

そこでやっと手を止め、国木田さんは眼鏡のブリッヂをくい、と上げてから答えた。

「無い訳ではない。だが、これとそれとは話が別だ。…今日くらい安静にしてろ吉屋。」

優しい答えに、彼女は納得がいかなかったようだ。頬を膨らませてから、ツンとそっぽを向いてしまう。

「ああ、そうですか。折角お詫びに回るであろう国木田さんの為にこの前差し入れ買っといたのに。ちなみに私の自腹で。」

「え、」

…彼が、手に持っていた本を落とした。

〝ほら、早く行くよ？〟と乱歩さんにもう一度声をかけられハッとする。

扉に手をかけた時、酷く明るい声が聞こえた。

「敦くん。探偵社にいる間は、与謝野先生に怪我を直して貰えるのだし、多少無理してもいいと思うよ！」

……言っている事が、先程と真逆である。