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第3話 ページ4

数十秒たった。
…声を掛けられている少女は一向に目を開こうとしないが果たして、本当に大丈夫なのだろうか。
そんな不安が少年を襲う様になった頃。



「うーん、」


どうしたものか。と呟いた男は少し悩んだ素振りを見せた後、少年の方に向き直りキメ顔で爆弾を落とすのだった。







「此れは、人工呼吸をするしか無いようだね。」



「…はあ!?」



此れだけ呼び掛けても目覚めないんだ。命の危機に晒されているかも知れないだろう?
そんな男の声を半分聞き流しながら少し頬を染めた少年はチラリと未だ目を覚まさない女を見る。




水滴を滴らせた美しい髪。陶器の様に白くキメ細やかな肌。すらりと伸びた四肢には適度に肉がついており、女性特有の色気を感じた。……そう。言うまでもなく、彼女は美しい。





人工呼吸か。昔、一度だけ教わった事があるはずだ。
その記憶が正しければ……


思わず、緊張感からかゴクリと喉がなる。




だが、そんな少年の緊張を知ってか知らずか。
彼女に近付いていった男は何の躊躇も無くその美しい身体に跨がったのだった。




「…!?」


驚きを隠せない様子の少年には目もくれず、彼は無駄に大きな声で言う。



「よーし、Aがあまりにも目を覚まさないから……私が、Aに、人・工・呼・吸、を…………やあ。目が覚めたかい?」




2人の顔と顔との距離がギリギリまで近付いた時、瞼の間から髪色と同じ瞳を覗かせた女。


ほっとしたのも束の間、彼女の顔色が頗る悪い事に気が付く。心なしか小刻みに震えている様にも見えた。



顔色はそのまま、自身とは対照的に随分楽しそうな男を睨みつける彼女。







「…何が言いたいのかは分かるでしょう?邪魔だ、退け太宰。」




-----------真っ青な顔で言われても、凄みが半減してるからちっとも怖くないねぇ。


そんな憎まれ口を叩きながらも、太宰と呼ばれた男はすんなり退いた。




やっと訪れた平和に喜びを感じた少年はふと思い出したように問う。


「あの…顔色が悪いみたいですけど、大丈夫ですか?」




先程の男同様問いかければ、今度は不満の言葉は返って来ないようだった。


「ああ、うん。……悪かったね、少年よ。
 実は悪夢をみてだな、その…こいつに人工呼吸をされそうになるという最悪な夢を。
 目覚めた時、本当に奴が目の前に居て、卒倒するかと思ったよ。」


…そう、苦虫を噛み潰した様な顔で言った彼女に僕は苦笑いする事しか出来なかった。

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作者名:じゅき | 作成日時:2016年6月29日 20時

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