100 ページ3
.
「Aくん、後で不死川さんが来るそうですよ」
「え!?本当に?」
ようやく実弥さんに会える、それだけで嬉しくて嬉しくてたまらない。
胡蝶さんはそんな俺の様子を見てにこにこと笑っていた。
「嬉しそうですね、きちんと安静にしていたからご褒美です。不死川さんに面会可能だと伝えました」
「ありがと、胡蝶さん」
言う事をきちんと聞いて、安静にしといて正解だ。
もう数日も実弥さんに会えていないせいで、寂しさから頭がおかしくなると思った。
香袋と羽織を握り締めて、にやける口元を隠す。
実弥さんに話したい事が山ほどある。
遊郭での戦い、上弦の鬼、宇髄さんの事。実弥さんが来るまでに頭の中で整理しておこう。
「では、また。不死川さんが来たら知らせますね」
「はーい」
胡蝶さんは小さく笑いながら部屋を後にする。
ゆっくりとベッドに寝転び、耳を澄ますと我妻くんの賑やかな声が聞こえてきた。彼は昨日、目を覚ましたらしい。
嘴平くんも状態が悪いと聞いていたものの、少し前に目を覚ましていた。
あとは竈門くんだけ。
一緒に遊郭で上弦の鬼の戦った同期として、早く彼が目を覚ますことを願っている。
宇髄さんは大丈夫なのだろうか?
最後に見たのは、須磨さん達の肩を借りながら歩く姿だ。
俺みたいに痛覚がない訳じゃない、普通の人間があの怪我を負って自身の足で歩くなんて流石は柱だと思った。
頑丈というか、なんというか。
「A」
「実弥さん!!」
ノックもなしに急に戸が開き、びくりと肩が震えた。
実弥さんの姿を目にし、嬉しさのあまりベッドから飛び降りてそのまま抱き着く。
あまりにも嬉しくて、じっとしていろと言われていたのに我慢出来なかった。
「安静だろ、動くんじゃねェ」
「すみません、実弥さんに会えて嬉しくてつい」
「横になっとけ」
実弥さんは困った様に笑いながら、俺を軽々と抱えてゆっくりとベッドに運んだ。
割れ物を扱うかのような動作に、相変わらず優しい人だと小さく笑う。
ベッドの上に置いていた羽織を俺の肩にかけ、わしゃわしゃと乱暴に頭を撫でられた。
「上弦の鬼相手によくやったなァ」
「実弥さんと一緒に鬼は殲滅すると約束しましたから」
先程と同じように少し乱暴に俺の頭を撫でる実弥さんは、ふと手を離して黙って俺を見つめる。
.
324人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
朝ギ(プロフ) - ゆきねこさん» コメントありがとうございます!更新遅くなってしまい大変申し訳ないです…これからも楽しく読んでいただけると嬉しいです! (7月13日 23時) (レス) id: 6f172a3ee3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきねこ - ふぁっ面白すぎて一気読みしました!更新待ってます! (2023年4月14日 9時) (レス) @page16 id: 0a7ce356e9 (このIDを非表示/違反報告)
朝ギ(プロフ) - ナハハさん» コメントありがとうございます!なかなか錆兎との絡みが少なく試行錯誤していますが、楽しんで読んでいただければ嬉しいです! (2022年12月7日 21時) (レス) id: 46cbb9d739 (このIDを非表示/違反報告)
朝ギ(プロフ) - あいせさん» コメントの有難いお言葉ありがとうございます!更新頑張っていきます! (2022年12月7日 21時) (レス) id: 46cbb9d739 (このIDを非表示/違反報告)
ナハハ(プロフ) - 私の推し(錆兎)の小説が少なかったのでこんなにも面白いお話に巡り会えてとても嬉しいです!応援してます! (2022年12月7日 11時) (レス) @page9 id: b3d00b40ee (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:朝ギ | 作成日時:2022年6月14日 22時