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「じゃあ、よろしくね」





にっこりと笑ったAが、ゆっくりと瞼を閉じる。

刀を構えて目を開けたAの雰囲気が一変した。ピリピリと肌を刺す殺気と冷たい視線、思わず息を吸うのを忘れてしまう。






「風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎ」






瞼をしたほんの一瞬だった。とてつもないスピードで刀が交わる。

さっと距離を取ったAは、先程と同じように可愛らしく笑っていた。

驚きのあまり、声すら出なかった俺を心配そうに見上げている。






「この技はよく実弥さんが使ってる。もっとしっかり構えてないと実弥さん相手なら刀が吹っ飛んでるよ」






口を押えて笑うAは、先程とは違い柔らかい雰囲気を纏っている。

それにしてもAの動きは今まで見た人の中で、格段に速かった。

身軽で、まるでふわりと花弁が舞うようだ。

それに手にしている緑色の日輪刀が、とても羨ましい。






「Aは…本当にすごいな」

「玄弥もね」






Aは、愛おしそうに俺を見る。いや、俺を通して兄ちゃんを見ている。

そんな優しい眼差しを向けられるのは、何年ぶりだろう。

それほどAが兄ちゃんに敬慕の念を抱いていることが分かる。

その視線にまだ慣れないせいか、まともに顔を見ることが出来ないでいる。






「兄ちゃんの継子がAでよかった」





兄ちゃんの事をこんなにも考えてくれる人がいて嬉しかった。

責任感が強く、苦難にも耐える為にすぐに無理をする兄ちゃんのことをAなら理解してくれる。

兄ちゃんの事が大好きで、風の呼吸が使えて、強くて、綺麗で。

一方、俺は日輪刀の色も変わらない、全集中の呼吸すら使えない。銃を使って、鬼を喰らい、消化吸収する禁じ手を使うしかない。






「顔上げて」






Aは、ひんやりとした冷たい手で俺の両頬を包む。

至近距離で見る藤色の瞳に情けない顔が映っていた。







「っ、ごめん…」

「玄弥は色々考えすぎるんだね」

「卑屈になってた」

「俺は玄弥が思うほど凄い人間じゃないよ。欠陥品だから」






そう言ってAは、先程と変わらない可愛らしい笑顔を見せる。

その笑顔と言葉があまりにも不釣り合いだった。






「そんな、」

「俺は早く死にたいけどまだ死ねないんだよね」





Aの言葉を理解するのに時間がかかって、かける言葉が見付からなかった。





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朝ギ(プロフ) - ゆきねこさん» コメントありがとうございます!更新遅くなってしまい大変申し訳ないです…これからも楽しく読んでいただけると嬉しいです! (7月13日 23時) (レス) id: 6f172a3ee3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきねこ - ふぁっ面白すぎて一気読みしました!更新待ってます! (2023年4月14日 9時) (レス) @page16 id: 0a7ce356e9 (このIDを非表示/違反報告)
朝ギ(プロフ) - ナハハさん» コメントありがとうございます!なかなか錆兎との絡みが少なく試行錯誤していますが、楽しんで読んでいただければ嬉しいです! (2022年12月7日 21時) (レス) id: 46cbb9d739 (このIDを非表示/違反報告)
朝ギ(プロフ) - あいせさん» コメントの有難いお言葉ありがとうございます!更新頑張っていきます! (2022年12月7日 21時) (レス) id: 46cbb9d739 (このIDを非表示/違反報告)
ナハハ(プロフ) - 私の推し(錆兎)の小説が少なかったのでこんなにも面白いお話に巡り会えてとても嬉しいです!応援してます! (2022年12月7日 11時) (レス) @page9 id: b3d00b40ee (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:朝ギ | 作成日時:2022年6月14日 22時

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