02 ページ3
.
生きる気力もなくし、胸の中にぽっかりと穴が空いた感覚がずっと続いていた。
15の年齢になった俺は半ば無理矢理、鱗滝さんの所を飛び出し、行き場がない中で自分自身を利用しながらなんとか生きてきた。
「お前、稀血か」
日が沈んですぐ、目の前に立つ異形なそれが鬼だと気付いた時には既に遅かった。
兄さん達が倒していた鬼と呼ばれる者をこの時、初めて目にする。
「久々のご馳走様だ」
鱗滝さんから何も教わっていない俺は、鬼を倒す術を何一つ知らない。
ゆっくりと後ずさりをするも、逃げ場は何処にもなかった。
ああ、もうこのまま食べられて兄さんの元にいってもいいじゃないか。
これでもう1人じゃなくなる。
そんな考えが頭に浮かぶと、足の力がストンと抜けて地面に座り込んだ。
ゆっくりと瞼を閉じて、鬼が来るのをただ静かに待つ。
「風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎ」
「ああああ…！！！！」
醜い断末魔が聞こえ、ゆっくりと目を開けるとそこには背中の�犹Ν瓩箸いκ源�が印象的の無造作な白髪の男の人が立っていた。
首をはねられた鬼が消えていく。
「生きることを諦めるんじゃねェ」
俺の方を振り返った彼は、傷だらけで少し怖かった。
小さく溜め息をつきながら、俺に手を差し伸べてくれる。
「あ、りがとう…ございました」
「てめェ、稀血か？」
「稀血？」
少し低い声だが、聞きやすいトーン。
わざわざ屈んで目線を合わせてくれていることに、彼の優しさを感じた。
「さっきも鬼が言ってたような…」
「これやる」
渡された小さな袋からは、ふわりと藤の花の香りがした。
それにしても、この人が持つには不釣り合いな可愛らしい桃色の袋に驚く。
お礼を言う前に、彼は背中を向けてしまった。
この人なら、この人ならきっと。
「あの、俺を…弟子にしてください。兄さんの仇をとりたいんです。お願いします」
「兄さん？」
「兄が最終選別から帰って来ませんでした」
「俺の継子になりたいとは、いい度胸してんなァ」
俺には、これしか道がない。
必ず俺が兄さんを殺した鬼を斬ってやる。
「おもしれェ奴だな。てめェ、名前は？」
「Aです。……鱗滝 Aです」
「不死川実弥だ、くたばんなよォ」
これが俺と、師範である不死川実弥との出会いだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 475人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
303(プロフ) - 実弥さんも夢主もめっちゃ好きです！不器用でとっても優しいところ可愛いすぎます(^^)これからも応援してます (2021年1月4日 4時) (
レス) id: e43609f7a0 (このIDを非表示/違反報告)
はまぐり(プロフ) - やばい面白いですね(語彙力)めっちゃ好きです！！ (2020年12月1日 14時) (レス) id: fe50b1b3b6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：朝ギ | 作成日時：2020年11月1日 22時
