12 ページ13
.
「どうですか？隊服似合いますか？」
「あァ、いいんじゃねェか」
縁側での休憩時間、実弥さんはおはぎを口に運ぶばかりでちっとも俺の方を見てはくれない。
口先だけの褒め言葉に、少しだけ苛つきながら実弥さんから貰った羽織りに袖を通す。
「隊服と羽織り、実弥さんとお揃いなので俺も実弥さんを見習って前のボタン開けときますね」
「はァ！？なにしてんだ！」
「本気で殴らないで下さい！！」
頭にくらった実弥さんの拳が頭にじんじんと響く。
この人、本当にこういう冗談通じない。
両手で自身の頭をさすっていると、実弥さんは先ほど外した俺のボタンを丁寧にしっかり一番上まで止めていた。
ようやく実弥さんの視線が俺に向けられる。
実弥さんはこうやってずっと俺だけを見てればいい。
実弥さんの瞳の中に、俺の姿だけが映っているのが満足した。
「なんでですか？」
「自分の面、見れば分かるだろォが」
「どんな面ですか？ねぇ、実弥さん」
俺の服を襟元までしっかりと正す実弥さんに顔を近付けると、顔を上げた実弥さんと目が合った。
長い上下の睫毛が影を作っている。
予想よりも近い顔に、自分から仕掛けておきながら驚いてしまった。
だが、そんな俺よりも耳まで真っ赤にして、顔を手で覆う実弥さんはまるで犬を追い払うかのように手をひらひらとさせる。
しまった、やり過ぎた。
「…向こう行け」
「はーい」
こういう場面で実弥さんをからかうと後で怒られるが、反応があまりにも可愛らしくて止められない。
実弥さんに出会って�狃�顔で得した�瓩覆鵑道廚Δ海箸�増えてきてしまった。
にしても、やっとおはぎより俺の事を見てくれた事が嬉しくて嬉しくて堪らない。
「実弥さん、そろそろ稽古に戻りますか？」
「先に行ってろ」
「分かりました」
くすり、と実弥さんにバレない様に小さく笑って稽古場へと戻る。
まだ失神している隊員の人達は起きていない。
腰にある日輪刀に手を添えると、最終選別の事を思い出す。あれから竈門くんとは会えていない。
聞けた兄さんの話しは、ほんの少しだったが、彼があまりにも優しく兄さんのことを話すから、情けないことについつい涙が溢れてしまった。
会って間も無い人に泣き顔を晒してしまうなんて、男に生まれたなら絶対にダメだ。
兄さんに怒られてしまう。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 475人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
303(プロフ) - 実弥さんも夢主もめっちゃ好きです！不器用でとっても優しいところ可愛いすぎます(^^)これからも応援してます (2021年1月4日 4時) (
レス) id: e43609f7a0 (このIDを非表示/違反報告)
はまぐり(プロフ) - やばい面白いですね(語彙力)めっちゃ好きです！！ (2020年12月1日 14時) (レス) id: fe50b1b3b6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：朝ギ | 作成日時：2020年11月1日 22時
