【文スト】肆・ネットでマフィアの首領と友達になってた件

折軸編-第四話- ページ4

「投降してください」

敦は腕を捻り、その背中と腕を引っ張るように男の上体を前方に倒す。その首元に小刀を鏡花が突きつけた。脅しである。

「遠隔操作系の異能力者なら、基本、本体は脆い。殺しはしない。けれど、少し眠って───」

物部天獄の身体が膨張する。異能力発動特有の光が巻き上がる。

「敦くん、鏡花ちゃん、下がるんだ！」

太宰の焦る声が聞こえ二人は跳躍する、しかし、それよりも0.1コンマ早く長く硬いが畝る装甲によって両者は壁に叩きつけられた。

縦に広い部屋に陣取るほどの大きさの胴体。見ているだけで鳥肌が立ってしまうくらいの無数の細い足が蠢く。頭部と思わしき部分には一対の触手がついている。

「きもちわる……」

曉のトーンは著しく低い。嫌悪感がこれでもかというほど詰め込まれている。先程まで瓦礫に埋もれていた碧海はもはや菩薩顔である。

「これまた、デカいねえ……」

与謝野は鉈の棟を肩へと置き、立ち上がり、威嚇の体勢を取る物部天獄を見上げている。

「大丈夫か、鏡花」

国木田は壁に叩きつけられ、床へと落ちた鏡花に駆け寄り安否を確認する。名を呼ばれた彼女は床に手をつきすぐに上体を起こした。軽く頭を打ったのか少し額に手を当てているが、どうやら問題ないようだ。そして直ぐに大きな影の方を見て、目を見張った。

「……私、凄く触りたくないのだけれど。大丈夫かい、敦くん」

反対側に叩きつけられた敦に駆け寄るのは太宰で、軽く揺すった。心底うんざりと言った視線の先には、物部天獄である。敦は飛び起きるように身体を起こした。そして、彼の視線の先を見て、絶句した。

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