実況者の坩堝-前編-.3 ページ47
「一応、捕まったら嫌なんで言っときますけど、その時間帯、アルバ……碧海と廃墟行ったんですよね」
本当に懐かしい。心霊スポット巡りはアルバ、つまり、碧海の趣味で、あいつのチャンネルの大半は、心霊スポットだらけだ。しかも、あいつが行くと絶対幽霊が現れる。
「あ、その点は大丈夫です。碧海から聞いているので。と、いうより、また行ったんですか。今度はどこへ?」
「事故で娘を失って狂った母親が地縛霊化した団地に行ってきました」
坂口さんの口元が引き攣った。
「何処かで聞いたことあるやつですね」
「そう何処かできいたことあるやつです。で、続き聞きます?」
「一応聞いておきましょう」
坂口さんはテーブルに置いてあった急須を湯呑みに傾けた。すかさず私も差し出した。図々しいとか、いいっこなしだ。律儀に入れてくれるのが、坂口さんの優しさだ。
「リアルホラゲーを経験するかと思いきや、碧海が颯爽と迷子ってる娘さん見つけて、地縛霊化したお母さんのところに連れて行って終わりです。最後、写真取ってきました」
見ますかと、スマホを取り出そうとすると、坂口さんは頭を抱えた。
「さらっと心霊写真作るのやめてください、二人揃って。あとで碧海には説教します」
そして、二人揃って、顔を見合わせた。
その後、沈黙。見事なくらいに、話が脱線していた。二人揃って、当初の目的から路線がかなり外れていた。咳払いして、暗転、話を戻すとしよう。
「さっきの男は、フランスで有名な異能犯罪者です。異能は〈相手の異能の一部を奪う〉という極めて厄介なものです」
そんな異能があれば、あまりにも厄介だと言える。しかし、この坂口さんの言葉の通りならば、つまり、この事件は。
「……私の異能の一部が奪われて、悪用されている」
彼は、重々しく頷いた。
「身に覚えは?」
私が首を横に振ると、固唾を飲んだ。かと言って、もう一つ疑問が残る。恐らく、その男が私から奪った異能の力はもう既に予測がついている。だが、もう一つ。
「なんで私の筆跡のある紙───"シナリオ"を持っているんでしょうか」
坂口さんの顔は、明るくはならなかった。
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しき(プロフ) - 黒井蜜柑さん» 消しちゃいます…で、また入れてクリアして消して…((( (2021年9月5日 23時) (レス) id: f7f2a05743 (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - しきさん» ノベルゲーム関連はやったら消しちゃいますよね…… (2021年9月5日 2時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
しき(プロフ) - 黒井蜜柑さん» 私もこの間までやってました。全クリしたので消しちゃいましたけど(( (2021年9月4日 18時) (レス) id: f7f2a05743 (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - しきさん» 昔してたんですよ (2021年9月4日 9時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
しき(プロフ) - 四ツ目神知ってるのちょっと嬉しい…() (2021年8月31日 19時) (レス) id: f7f2a05743 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒井蜜柑 | 作者ホームページ:http://minanami2.naho.ayaka.
作成日時:2018年9月1日 14時