【文スト】ネットでマフィアの首領と友達になってた件

実況者の奇譚.10 ページ39

「おおお……」

感嘆の声を漏らした。リコッタチーズ入りのパンケーキ。メープルシロップを垂らして頂く。写真を撮って、頬張っている。

どうやら、今は落ち着いているらしく人も疎らだ。従業員にそれとなく聞くと、今日は近場でイベントがあっているらしい。そしてこの時間は基本的に空いているとのこと。いい事知った。

「あげないんだね」

リンタローさんが不思議そうに尋ねてくる。確かに、基本直ぐにあげているけれども。

「帰ってします」

何となく、その方がいい気がした。何故だかは分からないが。私の言葉に、彼は、そっかと微笑み、エリスちゃんの口元を拭っていた。いや本当、父娘にしか見えないんだけど。妻じゃないよね、リンタローさん、これ、父娘だよね。

「これから何処か行きたい所とかあるかい？」

行きたい所か。私はゆっくりと思考を巡らす。そういえば、さっきイベントがあってるって言ったな。

「さっき従業員さんが行ってたイベントに寄りたいです」

そう言うと、彼は快く頷いた。そこを寄ったら、次は彼の行きたい所を尋ねてみるとしよう。私はそう思うと、パンケーキを口に運んだ。

その時だ、従業員がいらっしゃいませと告げ、席を案内しようとした刹那、悲鳴が上がる。私も、リンタローさんも入り口から離れた場所に座っていた。

「この店にポートマフィアのボスがいることは分かっている。直ぐに出てこねぇと、この店の全員を順番に殺していく。おい、そこの女！！妙な真似をすれば、お前から殺すぞ！」

複数の黒ライダースーツにヘルメットといった明らかに怪しいぞという風体が拳銃を持って入ってきた。店の客は怯え、案内をしようとした従業員は腰を抜かしている。

「連絡手段を全員出せ。携帯や、小型ピッチも全部だ！」

おい、私の携帯、アニメグッズが満載でついてるんだけれど、取れたらどうするんですか。

そんな中、怯えた客達は、おずおずと携帯電話を出していく。だが私は、ストラップとかカバーとか必死に外していた。壊れたらやだもん。

「ぱぺっとちゃん強い」

リンタローさんも出してきたらしい。エリスちゃんはもくもくと二枚目のパンケーキを食べている。いや、エリスちゃんも強い。

「これよりもアニメグッズが大事です」

全て剥がし終え、裸のスマホを犯人の持つ皮袋に入れた。その間にどうやら彼らはバリケードを、窓はブラインドで閉めてしまったらしい。

あ、これ、個人的に凄く楽しいかも。漫画的展開だよね、本当。

実況者の奇譚.11→←実況者の奇譚.9

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す