＊ ページ21
・・・
「おい、ぺーぺ、今日しかねえだろ、あほ」
「あ、あほって！ゲームやる?」
「今そんな場合じゃねえだろ」
大きい声なんてもの、小さな教室によく響くもので、
清川くんは笑いながらにぴーぴーくんを
叩いたり。もう見れないんだなあ、なんて
込み上げて来るものがあるのは、もうきりがない。
卒業、か。
結局好きなんて、たったの二文字も言えないで、
終わっちゃったな。
思わず笑うしかなくて、
正直、きっともう、諦めてた。
「ね、A?あれってAのことでしょ?」
「ん?」
・・・
好きなんて、伝えられる勇気も持ってないのに、
ずっと期待だけしてたなんて、どうかしてるよ、自分。
待ってるだけなんて、ずるい。
誰も知らない、私がずるくて、
待ってるだけだってこと。
誰も知らない、私がずっと、
彼を好きだってこと。
・・・
「相合い傘、じゃん、ぴーぴーと、A」
「ええ!?」
・・・
桜が咲いたとき、新しく、遅く芽生えた恋心。
諦めてたのに上乗せで、叶うはずないんだから、なんて
...結局、全部、言い訳になっちゃうよ、
始まらない。
動かない。
きっと、あなたも知らないでしょう。
きっと、笑ってても、何処かで何で、って思ってるでしょ。
潔く、振ってくれたら、楽になれるのにな、
・・・
「A、大丈夫?最後までからかうとか、ほんとないわ、
私キヨに言ってこようか?」
いや、いい。なんて、そんな声も、出てこないくらい、
心臓の声に、負けそうで。
「あのさ！！」
眼鏡がよく似合った、黒い髪がよく似合った、顔。
近くでなんて、しっかり見たことない。
整った顔だった。
もう、見れないんだなあ、なんて思ってる。
ずっと、込み上げて来るものがあって、
ぎゅぅっと軋むのが、わかった。
「ずっと、言えなくて、ごめん」
どうして謝ったのか。
「ずっと、見てるだけで、ごめん」
私には、理解もできないのに、
「最後に言っておきたいから」
どうしようも、なく。
ほろりと。
「うん、」
溢れるものが、あって。
「...すき」
小さな、声だった。
小さな、想いのはずだった。
「Aちゃんのこと、すきみたい」
へら、って弱々しく笑った目の前の彼を、
ぼやけた視界で捉えた。
「振ってくれたら楽になれる」なんて目で言われたって、
そんなこと、できないんだって。
黒板の隅っこの小さな想い。
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