後編 ページ3
「ね、だって。お城なんだから、誰かいそうなもんじゃない?王様とか!」
そう言って白く光り輝く城を指さすも、顔が熱くてたまらない。つい先ほどまでその王になってみたいと考えてただけに、恥ずかしいことを暴露した気になってくる。
案の定、彼女はふふっと吹き出し、変なの、と笑って見せた。ああ、穴があったら埋まりたい。
「でも、雲のお城の王様なら、悩みごととかないのかな」
だったら、うらやましい。
ふと彼女が漏らした言葉が、信じられず彼女を振り返る。彼女はそれに気づかず、寂しそうに城を見上げている。
(考えたこともなかった)
彼女にも、あんなにクラスで明るく、自由にふるまっている彼女が何に悩んでいたかなんて。
彼女がうらやましいと思っても、そんなことは考えたことが。
そう思っていたら、自然とこぼれ出た言葉があった。
「きっと、雲のお城の王様って、寂しいだろうね」
不思議そうに彼女が振り返る。
「ほら。一人ぼっちなわけでしょ?絶対寂しいと思ってるよ」
彼女は茫然と私を見つめて、そして心底おかしそうに、嬉しそうに笑った。
「そっかあ……あんなきれいなとこでも、一人なら寂しいか」
「それにさ、人がいたとして、掃除も大変だよね」
「それに、足が滑って落ちちゃったら痛いか」
彼女は楽しそうにそんなことを言って、そっか、と雲を見上げた。
「悩み事がなさそうな人でも、悩むことはあるものなのかな」
その言葉を聞きながら、わたしはそっと空を見上げ、白銀の雲の城を見上げた。一見悩み事なんてなさそうな、寂しい城を春風は運んでゆく。
私は、きっともう、雲の城にあこがれない。
三冊目「舞い散る桜の見え方」→←二冊目「雲の王の悩み事」 前編
3人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
高空 - 夏蜜柑さん» ありがとうございます!少しずつの更新になりますが暖かく見守って頂ければ幸いです。 (2018年3月4日 14時) (レス) id: afb8e92214 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - はじめまして!好きです!言葉の選び方がとっても綺麗でもう最高です…!更新楽しみにしてます!! (2018年2月26日 1時) (レス) id: ec14c5022d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:高空 | 作成日時:2018年2月25日 9時