歌い手がヤンデレ

ヤンデレがそらる ページ29

Aの視点



くらくらするような、甘い声で言われて思わず頷く。

なんで頷いたのかは、よくわからない。

そらる氏が、弱々しく見えたからかもしれない。

放っておけなかったからかもしれない。

また、その両方かもしれない。


「いいの？俺と一緒で」

笑顔で聞いているが、目が笑っていない。

その声は、威圧がかかっており。

もう嫌とは言わせない、とそらる氏から滲み出る空気が語っているようだった。

もしここで、嫌だ、なんて言ったらどうなるんだろう。

……試してみようか。

好奇心が、私の気分を上げていく。

いけないと分かっていても、行動してしまうのが私なんだな、と再確認した。



「やっぱり、嫌だ」

そらる氏の目は、怖くて見れなかった。

言ってから分かったが、私の声は震えていた。

それと同時に、手が震える。

それを抑えるように、反対側の手で震えを抑えようとする。

しかし、それはできなかった。


「は？」

地を這うような低い声で言われて、思わず体がはねる。

私の震える手は、そらる氏に掴まれていた。


「嫌って、どういうこと？」

ぐいっと強く引っ張られて、体がよろける。

前に倒れた私は、そらる氏に抱きしめられていた。

「ねぇ、答えろよ。嫌って、俺を拒否する気？」

「そんなの、そんなの…絶対許さないから」

初めて、そらる氏が怖いと思った。

それと同時に、言わなければよかったと、心の底から後悔した。

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