宮ンズの幼馴染＃2 (ページ36)

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淡色 ⑥ ページ36

「俺らで決めようや」

「？」

「ぜんぶ、俺らが決めたらええやん」

転がる花火の残骸に視線を落とす

視界の端、ひょっこり映り込む金と銀

「まず好きって何？」

「さあ」

「どうなったら好きなん？」

覗き込まれる顔
目が、合う

「…誰にも取られたくない、とか？」

「…知らんとこで泣かんとってほしい」

なんでそんな言い方するん、って
思ってはいても口には出てこんくて

泣き疲れたから、うまく口が動かんねん。

「…触るんも、声聞くんも、ぜんぶ俺だけがええ」

「…いちばん近くおってほしい。泣いとる顔も俺が一番に見たい」

「笑っとる顔はその倍みたい」

「痛いんも、辛いんもしんどいんも、ぜんぶ半分にして渡してほしい」

代わりに出てくるんは、枯れたと思ってた涙で

「…Aは？」

「…ん？」

「Aにとっての好きはなんなん」

透明な袋から線香花火を取り出す侑
治は私の手にそれを握らせて、「離しなや」って笑う

「…すき、」

「…おん」

「…分からへん」

「…お前が俺らに対して思うことはないん」

「…」

「…俺らはいつも思ってるで。さっき言うたこと」

火がつく

小さくて
瞬きしたら終わってまいそうな

「…一緒おったら落ち着く」

「おん」

「…嫌なことあったとき、悲しいときも、嬉しいときはもっと」

「…」

「…会いたくなる」

手つなぐのも
寄り道するのも
夜中のなんでもない電話も
確証のない未来の話も

二人となら、

「…ほんなら、それが『好き』な」

「…？」

「Aが次に誰かと付き合うんは、さっき言うた俺らに対しての気持ちを上回るやつだけやで」

「…そんな人おるん」

「知らん。おらんなら俺らとおればええやん」

いつも自信満々に言うてくれるから
ああ、それでええんや、って思える

「…ええの」

「？何があかんの」

とっくに落ちた花火

それからすぐに、私らはそれぞれの「恋人」と別れた。