シュリンガーを捧ぐ【O】1. ページ36
私の一番古い記憶はよく家に来ていた兄の友人に告白する記憶。
『おおきくなったらさとしくんとけっこんする！』
『おー。ありがとな』
軽い返事と笑いに流されたのだと幼心ながら気が付いてしまった私は泣いて騒いで大変だったらしい。
大泣きする私を慰めてくれたのは彼…ではなくって一緒にいたもう一人の兄の友人。
泣きわめく私をただ見下ろすだけの彼の顔は今でも忘れない。
彼と兄がそれからもずっと仲が良かったせいで私も彼との縁を切れず、彼相手に何度も失恋をした。
二度目の失恋は中学に上がった頃、彼が漕ぐ自転車の後ろに乗っていたのは髪の長い綺麗な女の人だった。
三度目の失恋は高校生の頃、兄に会いに来た彼が連れていた女性は指輪をしていた。
それだけ失恋してるんだから諦めれば、って友人には言われるけどそれが出来たら苦労しない。
彼がさっさと結婚してくれれば諦めきれると思って、三度目の失恋時は正直ほっとしていた。
そんな私の心の内も知らず、彼はその女性とは結婚せずに独身のまま。
こうなったら私の方から距離を置くしかないと決心して実家を出たのに。
「Aちゃん元気ぃ？」
「…どうも。大野さんお久しぶりです」
「昔みたいに智くんって呼んでくんねぇの？」
「すみません、一応仕事中なので」
「ええ、つまんねぇの」
目の前でふわふわと呑気に笑う彼に腹がたつ。
ついでに言うと横でにやにやしてる兄のことは殴りたいぐらい。
「今日は仕事の打ち合わせと聞いていましたが」
「そうそう。今度うちで新しく香水のブランドを立ち上げようと思ってて。これがその資料なんだけど」
兄が差し出してきた資料をパラパラとめくって中身を確認する。
「新商品をお前に依頼したいんだよ」
にこやかに微笑む隙のないスーツ姿は、イケメン若手社長と呼ばれるだけあって我が兄ながら格好いい。
「出来るだろ腕利きの調香師さん？」
「随分な言い方ですね」
ただし性格の悪さに難あり。
見た目に騙されるな世の女性達。
「それで、大野さんまでいるのはどうして？」
「俺も開発チームだから翔くんに頼んで連れてきてもらったの」
「うちの会社に就職してたんですね」
「驚いたぁ？」
「はい」
会社とかに縛られたくなさそうなのに、意外。
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とも(プロフ) - おはようぉございます。正に嬉しくて号泣です。お互いの気持ちが繋がった。素敵なお話をありがとうございました。 (2020年12月12日 7時) (
レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - 柚さん» コメントありがとうございます！今回の更新でその気になった箇所をきちんと回収できていると思うので…楽しんでいただけたら嬉しいです。 (2020年12月7日 23時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
柚(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています^ ^なんで息を呑んだのか気になりますねぇ(^-^)♪ (2020年11月24日 8時) (レス) id: c036a1a7fd (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - 橘花さん» 前のシリーズから！長く読んでくださってありがとうございます(*^^*)自信満々の翔さん格好良いですよね…あと二人も頑張ります！！ (2018年6月26日 11時) (レス) id: 00c99a5500 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - まいさん» 強気×強気、良いですよね。まだまだ書き足りない事もあるので続編も考えてはいます(^-^)残りの二人も頑張りますね！ (2018年6月26日 10時) (レス) id: 00c99a5500 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2017年3月15日 20時
