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まあ実際目の前にすると何も聞けないんですけどね。
松本さんの車から降りたところで鉢合わせてしまったのは、腕に可愛らしい女性をまとわりつかせた翔さん。
しかもその場にはもう一人女性がいて何やら揉めているみたい。
よりによって修羅場に居合わせるとか、タイミングが悪すぎて自分の運の無さを嘆きたい。
「…み、見なかったことにしたいです」
「俺だってそうしたい」
慌てて車の陰に隠れた私と松本さんの深いため息がハモる。
「すぐ隠れたんでよく見えなかったんですけど、翔さんと腕組んでた人が着てたのは件の洋服です」
嘘、よく見えなかったというのは事実じゃない。
馬鹿みたいに視力が良いせいであの女性が着ていた服は翔さんの部屋にあった物だとすぐに分かってしまった。
「じゃあ、そっちは浮気じゃないよ」
「え？」
「腕組んでる人、翔さんの妹さんだから」
「妹さんいるんですか！？」
「え、聞いてないの？」
ひそひそ声で知らされた衝撃の事実。
妹さんがいるなんて知らない。
松本さんに質問されて、私は翔さんのことをよく知らないことに気がつく。
私が知ってるのは家事が壊滅的にできなくて意外とラーメンが好きだとか、たくさん食べるくせに食べ方は綺麗なところとか、言葉の使い方に気をつけてるところとか。
そんな、生活の中で知れることばかり。
仕事のことは聞いたって仕方がないから知ろうともしなかったけれど、さすがに家族のことを聞かされてないってどうなんだろう。
うわ、まずい。
どんどん自信が無くなってくる。
「もう一人の、ちょっとキツめの女性に見覚えはありますか？」
「うん…俺の前任の秘書。揉めて部署異動になったって聞いてる」
「ええ」
「ちょっと間に入ってくるから、Aさんはここにいてね」
「お気をつけて」
私の返答にちょっと笑った松本さんが翔さんの方に行って、大きな声がしばらく響いた後に静かになった。
変わらず車の陰で蹲っていた所にコツコツと足音が近づいてきて、私の側でその音が止まる。
「…悪い」
上から降ってきたのは待ちくたびれた翔さんの声。
しぶしぶ顔を上げて目を合わせたら、ふはっと吹き出された。
「何で笑うんですか」
「いや？拗ねた顔してんなと思って」
「拗ねてませんよ」
本当はそう言いながらも唇が尖っていて不服そうな顔になってるのは自分でもわかってる。
ただあまりにも子供っぽいから認めたくないだけ。
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紫苑(プロフ) - りえさん» リクエストありがとうございます。『ハラグロなふたり』の続きですね。鋭意創作中ですので今しばらくお待ちください！ (2021年1月4日 13時) (
レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます。赤菊の君の人気ぶりにびっくりしてました！喜んでいただけて嬉しいです。 (2021年1月4日 13時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - ゆっこさん» リクエストありがとうございます。潤くん視点のお話書かせていただきました！ (2021年1月4日 13時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - mihoさん» リクエストありがとうございます。Lapis lazuliの続きですね！承知しました。ただいま創作中ですのでしばしお待ちください！ (2021年1月4日 13時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - るきさん» リクエストありがとうございます。『赤菊』の翔さんサイドを書かせていただきました！大野さんのお話はもうしばらくお待ちくださいね。 (2021年1月4日 12時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2017年1月23日 20時
